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連載 | #8 カルピス ゲンエキ[現役]インタビュー

プロ棋士 橋本崇載のゲンエキインタビュー「スーファミが家にあったら将棋はやってなかった」

ゆらぐ、プロ棋士としての存在意義


━━橋本さんは将棋バーの経営や漫画の監修をされるなど、活動の幅が広いと感じてますが、どういった意図で取り組んでいるのでしょうか?

橋本 プロならではの悩みというか、プロになってから15年間その悩みが常につきまとっているんですが、まずはプロ選手としての存在意義ですよね。

プロであるからには、野球で言えば常に2軍にいる選手だとだんだん野球が嫌になっちゃうと思うんです。周りからは「プロですごいね」と言われても、同期の活躍もみているし、やはり自分はそう感じなかったりすると思うんです。

僕自身、プロとしては中の上くらいで大したことないと思っています。もちろん1年もしくは2年くらい、上のランクに入ったことありますから、仮に野球選手だったら何億とかもらえると思いますが、将棋のプロではそのようにはいかないです。

そして40歳くらいからプロとして下り坂が始まり、50歳になったら全く勝てなくなり、あとは自分の子供くらいの世代を引き立たせるだけの、単なる踏み台になってしまう……といったこともありうる世界なので。

━━若い才能はどんどん出てきますよね。

橋本 おそらく普通に会社勤めをしていたら50歳くらいが一番の稼ぎ時なんですよね。そして我々はそういう人に対して劣等感を抱くと思うんです。

そう考えた時にまず「自分の人生どうしよう」と悩みますよね。

プロになるための修行をしている時期というのは、情熱があるから一つのことに専念できるんですが、プロになってちょっと小金が入って遊びを覚えたりすると、なんかもう毎日ひたすら将棋ばかりやっているのが正しいかどうかわからなくなるんです。

━━相当ぶっちゃけていますね(笑)。

橋本 これまで全然遊んでなかったので、遊ぶ楽しさを知ったら将棋どころじゃない。もちろん将棋は大事なんだけれども、「世の中ってこんなに面白いんだ」と。

だから、そういう未来への不安からの他領域での活動ということも視野にありつつ、単純に楽しいことがしたいという思いも一方でありました。

━━将棋バーを運営されて、楽しい以外に何か得るものはありましたか?

橋本 遠方からお店に来てくれる人がいるんです。「ここに来るのが楽しみで」と言ってくれて、とても嬉しく思います。旅行でも仕事でもなく、わざわざ自分のお店に来てくれたわけですから、それはもう素直に「ありがとうございます」という気持ちです。

あとはインターネットが普及し、将棋の道場がバンバン閉鎖しているんですけど、その趣味の集まりとして、教室や習い事という形でなく、気軽にお酒を飲みながら将棋を指す場所を提供できているのかなと思います。

青春の心の支えはアイドル


━━今回は「カルピス」のゲンエキインタビューということで、橋本さんの青春時代のお話もうかがえればと思います。

橋本 中学校1年生の頃に、道場に行くために学校から帰ろうとして、靴箱を開けた時になんとラブレターが入っていて「おっ!?」 となりました。そこには「付き合ってください」みたいなことが書いてあったんですよね。

━━ストレートですね。どのような返事をしたのですか?

橋本 なんとお断りせずにスルーしていたのです。しばらくすると周りの女の子に「あんたラブレターもらったでしょ」って言われて、自分としては「え? なんで知ってんの」という感じで。

周りの女の子曰く、ずっと返事を待っているとのことだったのですが、奨励会の大切な対局が3日後に迫っている中でそういうことを言われ……結局は話自体流れてしまいました。

今、考えると「なんてばかなことを……」と当時の自分に言いたいですけど。

━━対局には支障が出なかったんですか?

橋本 それは……手紙をもらった当日は支障が出たような気がしますね(笑)。

━━他に青春時代のエピソードはありますか?

橋本 やっぱりアイドルですね。

15歳から18歳の頃になるまでの間は、将棋のプロになるため日々修行を積んでいて、女性と無縁の冴えない生活を送っていたのですが、心の支えになったのは、当時大人気の女性アイドルグループでした。

そのアイドルのポスターも家に貼っていましたし、本当にこの人たちがいなかったら、いろいろ大変なことになっていました!!

ファンのために、泥臭く、最後までガッツを


━━棋士として、そしてバーの経営者として、いろいろな経験をしていると思うのですが、改めて今後の目標について教えてください。

橋本 プロ棋士としては腕を上げる、実績を上げるといったつまらない答えなんですけど、正直まずはそこですね。

自分の場合、対局の様子や報道などを通して将棋以外の部分が目立ちすぎていたりするので、それに伴う実績を残したいです。わかりやすく言うと、タイトルの獲得ですね。私も若くないですし、上を目指せるうちに頑張っておきたい。

それ以外では、将棋バーの経営者として、来ていただいたお客様に一人でも多く満足して帰ってもらいたいと思っています。

あとは、自分もいろいろと芸を広げていきたいですね。エイジアプロモーションという芸能プロダクションに所属させてもらうことになったのも、しゃべりにせよ何にせよ、上手くなりたいという思いがあったので、いろんな意味で成長していきたいです。

━━将棋については自身の腕を磨き、実績を上げるということですが、どういった心持ちでそれに取り組んでいけばいいのでしょうか?

橋本 確かにそれは、難しいんですよ。でも、とにかく、まず仕事ですからしっかり時間かけないといけないです。それに、なぜ勝負し続けるかというと、私は大した人間ではないんですけど、なぜだかファンが多いような気もするんです。

━━そうだと思います(笑)。

橋本 ええ(笑)。本当にありがたいですし、その分もっと頑張れるし、応援してくれる人が一人もいなくなったらもう将棋はやらなくていいかなと思っています (笑)。

━━橋本さんにとって、ファンの声援が大きいのですね。

橋本 そうですね。だから、無気力対局みたいなことは絶対にしないですし、どんなに内容が悪くなっても、なるべく泥臭く、最後までガッツを見せてやると思いながらやっています。

━━最後に、世の中の多くの人が日々、何かを頑張っていると思います。ゲンエキで活躍する橋本さんから、「さらに頑張ろう」「第一線で活躍したい」と思っている人に対してメッセージをお願いいたします。

橋本 僕は将棋のプロで、特殊な仕事なので「すごい!すごい!」と言われるんですが、僕から見たら、みなさんそれぞれの仕事のプロなんですよね。

会社や社会からそれぞれが必要とされているから働いている。だからこそ、誇りを持って、自信を持って、失敗を恐れず、仕事に向かってほしいですね!
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橋本崇載 // はしもと たかのり

将棋棋士

1983年3月3日生まれ。石川県小松市出身。段位は八段(2015年11月現在)。

2001年4月1日(当時18歳、四段)にプロ入りを果たす。「ハッシー」という愛称で親しまれ、温和な人柄と対局時の個性的なファッションでインターネットのみならずテレビ上でも話題になる。2012年2月3日には八段に昇段し、2015年度の11月末現時点での戦績は17戦10勝7敗。

また、棋士としての活動の他に、将棋を楽しみながらお酒が飲める「SHOGI-BAR(将棋バー)」のオーナーや、芸能事務所 エイジアプロモーションに所属し、バラエティ番組などへの出演を増やしている。

橋本崇載

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