Hyper Dimension
──Naohiro Yako ’s interview
前編に引き続き、WEBデザイン/映像会社のflapper3創立メンバーであり、オンライン・レーベル分解系レコーズのオーナー、そしてイベントOUT OF DOTSのオーガナイザーを務めるYako氏のお話を掲載いたします。
※本コンテンツは、『界遊005』の特集「ハイパーリアルな現在」のWEB展開として企画されたものです。前編はこちら
Chapter6: OUT OF DOTS
──分解系ではYakoさんがディレクターとして作曲陣を選んでいるのですか?
Yako ゴクさんからの提案もあるし、僕からも提案し合います。それを基に僕が決める。分解系の作品の成り立ちには「つくる人」・「届ける人」・「受け取る人(ユーザー)」の3つがある。「ユーザー」は分解系をチェックしてくれている人で、コンテンツを「つくる人」はゴクさん。あの人がコンテンツをつくってくれるから成り立つ。僕はその間の「届ける人」になりたい。
──OUT OF DOTS(以下OOD)は分解系版の「ネットレーベルのクラブイベント」という意識なんですか?
Yako OODはネット音楽を現場でやりたい部分もある。ただ、分解系のパーティー自体とも別で、OODには分解系の人はあまり出していない。最初は僕がVJもしていたんだけど、それもやめました。オーガナイズに専念するために、ディレクションはするけどVJはやらない。
分解系も、ゴクさんを届けたいっていう自己満足的な思いから始まってるし、OODも、「分解系の人を世の中に見せる」んじゃなくて、「俺が観たいパーティーをつくる!」というのが元々の意識。
1回目がわかりやすい例なんですけど、Saitoneさんがいてゴクさんがいて、Quarta330くんやNyolfenもいる。チップチューンだったりダブだったりエレクトロニカだったり、微妙にテリトリーやジャンルが違う人を引っ張ってきて、タイムテーブルで一本のラインをつくる。「この人を好きだったら、この人も好きだよね?」という、それぞれの中のドットを集めてラインにしたいっていうテーマが自分の中ではある。
※2011年3月18・19日にかけて行われたOut Of Dotsの公式サイト http://outofdots.com/
OUT OF DOTS -Aggressive Line-
──パッケージングという意味に限れば分解系でのコンピレーションがあるわけですが、それでもリアルの場で展開する必要性を感じるということですか?
Yako リアルの場は必要と言うか、ネットだけでは足りない。当然の話ですが、ネットの中に「いる」といっても、当人はネットを「見ている」環境なんです。分解系を見ている時もそう。
でもOODはクラブ、「現場」ですよね。現場には「現場」の音楽があるから、ただ分解系でリリースしているエレクトロニカ系の人達を集めても意味がない。その場その場に相応しいものがあると思うんです。
赤身レコーズから出たネットレーベル年表を見ると、
分解系の新参者っぷりがよくわかる(笑)。過去にネットレーベルの歴史を築いた人達──鯖缶レコードやMaltine、もっと言えばチップチューンにはもっと昔からのレーベルが存在する。彼らに敬意を払いながらも、同じようなことをしても面白くない。LOコンピ(Electo-LO-nica Conpilation)はその第一弾という位置付けです。コンピを出すなら、何かリアルのものを絡めたいんです。今も3つくらいプロジェクトを進行させていますが、それも「ただの」コンピには絶対したくない。点と点を結ぶ形になった時にコンピレーションをつくって、メジャーレコードにはできない面白いことができるのはネットレーベルの利点だと思います。
Chapter6: Social Networking Service
──分解系でマネタイズするプランは持っていますか?
Yako 「分解系でCD出します、iTunesで売ります。一曲100円、100人買ってくれて1万円」とか、今は考えていない。コンテンツはあくまでネットで無料配布、お金をとるとしたら現場体験と考えています。だからOODも、少しは稼ぎにしたい。体験にお金を払う、坂本龍一と考え方は同じですね。
分解系のアーティストに対しても、まずネットでユーザーに知ってもらって、ライブでお金にしてもらう還元の仕方を考えてます。または分解系経由でマネタイズできるところへ広がってもらうとか。現状では、そういう対価のやり方しかできない。正直、生活にとけ込む音楽を提供という点と、現場体験という点での矛盾は自分の中でも課題ですが。
Maltineも先月ドネーション・ボタン設置していたけれど、同人業界で言えば、買うことが「お布施」で、OODや分解系に関しては現場をお布施にしてもらい願望があります。もっと言えば、イベントにはハコが必要で、今のOODがやっているMOGRAという空間の空気を伝えたい。
──数年前からですが、オタクカルチャーにせよネットにせよ、オシャレな文脈でも語られるようになって、それがここ1・2年で定着していますよね? 同時に盛り上がりも加速しているように思います。
Yako MOGRAもオープンしたばかりの09年はこんな盛り上がるなんて思いませんでした。金曜日でさえ、リクエストBOXをDJブースの前に設置して、そこにアニメのタイトルか曲名を書いた紙を入れると、それをかけてくれる程だった(笑)。
個人的な見解としては、ソーシャルネットワークが果たした役割が大きいと思う。日本でTwitterやFacebookが認知され出した時期とMOGRAが出来た時期が重なってるんですよね。僕は嫌いだけど、「TwitterとかFacebookを使いこなしてUstreamを観てるのが偉い」という風潮が、今は否めない。
ただのツールなのに、それをわからずステータスにしている人が多い。その良し悪しは置いておいて、元々そういったSNSやツールを使いこなしていたのは当然秋葉原にいた人達だし、Ustも早くから導入していたのはMaltineやMOGRAだったんです。だから秋葉原という街の流れが、世の中で盛り上がっている流れと合致したということなんでしょうね。
タイミングが良かった。インターネットの盛り上がりのおかげもあって、Ustもこんなに普及すると思ってなかった。09年のokadadaのクリスマスイヴUstも本当に盛り上がってたしね。
※09年、okadadaが自宅でDJ Ustを行い、配信中にいとうせいこうがTwitter上で紹介したことをきっかけに話題が広がり、最終的には2000人を越える視聴者を記録したUst http://togetter.com/li/2219
Chapter7: Paralell World TimeLine

──MOGRAやネットレーベル、ギークハウス周辺など、インターネットと親和性のあるムーブメントが数多く起こっています。本誌『界遊005』の「ハイパーリアル」特集の中でも、ギークハウス主宰のphaさんがyakoさんと同じように「ネットもリアルも当然のものとして等価に使い分ける」と言っていました。
Yako 今までネットは「ネット」で、リアルは「リアル」、そこに属する人は違う場所という認識だった。それが、リアルだけで活動していた人がステータス的に「ネット」に近づいたのと同時に、ネット中心の人も「リアル」に近づいたんだと思います。ちょうど、上と下とが中和しちゃってるという感覚。お互い、「どっちもやんなくちゃダメだ」じゃなくて、「こっちにも行きたい!」というニーズが合致した。
──「ネットは気持ち悪い」という言説も、ソーシャル・メディア時代と呼ばれる現在では減っていますよね。
Yako それは感じます。「気持ち悪い」というイメージが払拭されたのはmixiの存在が大きかったと思う。自分が初めての参加したオフ会もmixiでした。flapper3を立ち上げたばかりの頃、mixiの初期はデザイナーの間で流行っていました。Twitterをきっかけにして知り合うという今と同じ状況が初期のmixiにはあったんだけど、それがもっとラフになった気がする。「常にある/いる」というのが当たり前になったような。
読売新聞のWEBサイトにあるセミトラ(flapper3萩原さんの所属するセミトランスペアレント・デザイン)展のインタビュー動画で、「常にネットの中に居続ける」という言葉があって、それが僕にもよくわかる。Twitterはまさに視認しやすい時間軸を持ったWEBサービスで、そこが新鮮だと思う。インタビューに答えている今もTL気になる、みたいなところ(笑)。
以前、彼女が『ラブプラス』すごいハマってたんです(笑)。久しぶりに休みが取れて、デートに行こうとなった時に、「ちょっと待って、その日は寧々ちゃんとデート……」という話になって、ダブルデートを提案された(笑)。その時に、「あ! 片足を突っ込むってこういうことなんだ!」と気付いて、もうリアルもバーチャルも一緒なんですよね……。
──待ち合わせ設定をしたら「その時間」に起動させないといけないんですよね。
Yako 現実の時間軸と同じく、バーチャルの空間でも生活が繰り広げられている。それはまさに「片足を突っ込んでいる」状態ですよね。
ネットはON/OFFじゃなくて、リアルと同じタイムラインの平行世界であって、「両方にいる」感覚が今の時代なんだと思う。どっちも「同じ自分の中の時間軸」。
Chapter8: not Genre but Direction,so Three Dimensions
──Yakoさんは、ソーシャルメディア時代にその恩恵を感じますか?
Yako flapper3は完全にオフラインで出会った仲間がネットに活動の場を移していったわけですが、分解系は真逆です。バラバラだったネット上で知り合った人間を、例えばOODというオフラインの場に集めて、そこでみんなが初めて出会う。分解系で、現場で知り合って、『面白い、リリースしましょう!』」という例は10%あるかないか。殆どはネットで聴いて、ネットでやりとりしてリリースする。僕自身、分解系からリリースしてもらった人と初めてその場で顔を合わすということが多いんです。
──信頼関係を築く上でネットだけでは心配ではないですか?
Yako 10年以上前のネット環境だったら心配だったかもしれない。けど、今はある程度調べられるんです。しっかり活動している人だったら大体把握できるし、TwitterやFacebook、MySpaceを見れば連絡先まで分かる。文字情報だけでもその人のことが見えてくる。完全に初対面でも活動を知っているから、逆に安心感がある。今までそこで裏切られたことはないです。
例えば分解系の飲み会では、お酒をちょこちょこ飲みながら、ずっとテンションも上がらず下がらず、普通の淡々とした調子で「あのアニメは」だったりエロゲや音の話をする。これが別のレーベルの飲みだと、バカな話とかネタ的なノリが面白い場なんだけど、共同体によってそれぞれのカラーがあります。「ネットだから様々な種類の人が集まる」という考えは少し違って、「ネットだからこそお互いのバックグラウンドが見えるから同じような人が集まる」と思う。
──その上で、各コミュニティ間でも仲が良いと言うか、上手く連帯していますよね。
Yako ネットに詳しい人間はツールの使い方が豊富だからでしょうね。Twitterひとつとってもそうです。いわゆる「リアルからネットに近づいた」人は、「◯◯っていいよねー☆」みたいなreplyで行う携帯メールみたいなやりとりが多い。ネットに常にいる人たちは逆に、好意の表現の仕方からして、replyじゃなくてふぁぼで反応したり、ある発言に対していつの間にかreplyも飛ばさずに会話したりする。WEB上でコミュニケーションを取るツールの方が、現実でのコミュニケーションよりも多いぶん、自然と繋がっていくんです。
──お話を通して、分解系の埋れている音楽を拾い上げるというコンセプトや、OODではパッケージングによる見せ方にこだわるYakoさんは、オーガナイザーとしての意識が強いですよね?
Yako プラットフォームに乗せたいという気持ちはある。クラブでVJを毎月やっていて、レギュラーパーティーもある中で、毎回同じよう顔ぶれで同じ系列イベントでよく見る人たちが集まるのは、なんか違うと思うんですよ。面白いし、集客的にも王道だし、メジャー感もあるんだけど、それは「でっかい身内」に過ぎない。
本当にカルチャーとして続けるなら、当然垣根を越えないといけない。けれど、その越え方も大事なんです。最近のイベントやフェスが特にそうだけど、「とりあえず色んなジャンルを集めました」というだけのものが多い。「ジャンルレス」「オールジャンル」とか煽るだけ煽って、方向性もバラバラ。
ジャンルは囚われる必要は無いけど、方向性には囚われたほうがいいと思う。OODはそこには拘っています。ジャンルは違っても方向性さえ一緒だったら、どこかで引っかかってくれたお客さんにも絶対垣根を越えてもらえるからです。
今年2月のももいろクローバーと神聖かまってちゃんのイベントのように、入れ替わる時に完全に客も入れ替わるようなイベントが多い。組み合わせがパーティーとしては面白いけど、それが交わらなかったら何の意味もない。その場に色んなテリトリーの人達が集まったときに、それぞれのテリトリーに興味を持つようなパーティーがやりたい。色んなジャンルのユーザーを集めてリンクさせるというのは、ソーシャル的に面白いから流行ってるのだとは思うんです。でも、その先に繋がっていかないことはしたくない。
LOコンピも、ユーザーには『COMIC LO』読んだことない人が多いだろうし、逆に普段から読んでいる人にエレクトロニカを聴いている人は少ないはず。あとサイトデザインには興味があるのに、ネットレーベルのことはあまり知らない人がデザイン界隈には多かった。けれどサイトデザインを通してレーベルにも興味を持ったみたいだったし、そういった三方向のユーザーが同時に介在して、繋がるのが面白い。
──Yakoさんの活動は、WEBとリアルを行き来しながら、相互を補強しつつあるという意味で「ハイパーリアル」的だと思います。
Yako 僕がやりたいことはシンプルで。パッケージングで点と点を結んで線にして、さらにOODや分解系というWEBとリアルの平行世界を繋ぐことで「面」にできればいいと思っています。
了