連載 | #5 「新潟国際アニメーション映画祭」特集

大友克洋、りんたろう新作の上映会にサプライズ登壇「りんさんなので、やるしかない」

大友克洋、りんたろう新作の上映会にサプライズ登壇「りんさんなので、やるしかない」
大友克洋、りんたろう新作の上映会にサプライズ登壇「りんさんなので、やるしかない」

りんたろう監督作『山中貞雄に捧げる漫画映画「鼠小僧次郎吉」』©山中貞雄/「鼠小僧次郎吉」製作委員会

新潟市内で3月22日(水)まで、アジア最大の長編アニメーション作品の祭典「第1回新潟国際アニメーション映画祭」が開催されている。

市民文化施設・新潟市民プラザや映画館・T・ジョイ新潟万代など、市内の各所で映画の上映会やトークイベントが行われており、押井守さん、渡辺信一郎さん、森田修平さん、片渕須直さん、磯光雄さんといった面々が各会場に姿を見せた。

「第1回新潟国際アニメーション映画祭」

本稿では、3月21日に新潟市民プラザで行われた、りんたろう監督の14年ぶりの新作『山中貞雄に捧げる漫画映画 「鼠小僧次郎吉」』のワールドプレミア上映をフィーチャー。

りんたろう監督、マッドハウスMAPPAを立ち上げたことで知られる名プロデューサー・丸山正雄さん(スタジオM2代表)、弁士役の声優・小山茉美さん。

そして、公式サイトの登壇者にクレジットされておらず、当日サプライズ的に登壇したキャラクターデザイン担当・大友克洋さんの4人によるトークイベントの模様を掲載する。

【関連】「第1回新潟国際アニメーション映画祭」特集

りんたろう「完璧に日本のアニメーションが変わった」

劇場アニメ『銀河鉄道999』『幻魔大戦』『メトロポリス』などで知られるりんたろう監督によるの最新作『山中貞雄に捧げる漫画映画 「鼠小僧次郎吉」』。

28歳の若さで亡くなった映画監督・山中貞雄さんが残したシナリオを、サイレントアニメとして再構築した作品となる。

自身14年ぶりの新作として注目を集めた本作について、りんたろう監督は「久しぶりにアニメの現場を感じた時に、完璧に日本のアニメーションが変わったなと思ったんですよ、つくり方とか全てが」と話し、久しぶりのアニメ制作に挑んだ当時を述懐。

「それで自分なりにどうするか丸山(丸山正雄さん)と相談して、僕らに『鬼滅の刃』の続編はつくれないけど、自分たちのスタイルでやろう、日本の映画の大元に戻ろうと。そして山中貞雄でどうか? という話になって、手探り状態から絵コンテまでつくろうと思って始めたのがこの作品です」と、制作の経緯について振り返った。

トーク中の様子。左から大友克洋さん、りんたろう監督、小山茉美さん

久しぶりの監督作「どうせなら反時代的アニメをやろうと」

続けて、「今の若い人たちにとってサイレント映画は、お呼びでないのかもしれないですけど、ヒッチコックも“映画はサイレントから全てが始まった”と言っていて、僕もサイレントを見ると、ほとんどあの時代に頑張った監督たちの作品がそのあと進化しながら変わっていったように思います」とコメント。

「(この映画を)完璧にサイレントにしようと思い、鼠小僧次郎吉の江戸の巻を山中貞雄の脚本を使いながら、ドラマを今風に変えるのではなく、むしろ山中貞雄の気分になってつくろうと思って、「山中貞雄に捧ぐ」というのがメインタイトルで、中身が「鼠小僧次郎吉」という構成になりました」と、本作の骨子について説明した。

本作の出来について、「浦島太郎みたいに、久しぶりに何かやろうとした時に、どうせなら反時代的アニメをやろうということで、僕的にも満足のいく形ができました」とコメント。

「こうやって丸山と2⼈でサイレント映画をつくれて、山中貞雄は“ちと寂しい”と言ったけど、こっちはつくれて“ちと嬉しい”ですね。紙風船のところだけパートカラーにしたんですが、自分でも流れてくる映像を観て泣きました」と、感慨もひとしおの様子だった。

「血の出るような思いで、無理難題の中で、やっとできあがった映画」

企画を担当した丸山正雄さんは、なぜ今このタイミングで山中貞雄さんを取り上げたのか。そして、りんたろう監督と共に制作することになったのかをこう力説する。

「山中さんのすごさ、この人のことを残していきたい。山中貞雄はハートウォーミングで、小市民を丁寧に優しく描いていている。彼はまだ28歳で戦争の中で死んでいって、遺作となったのは『人情紙風船』で、“ちと寂しい”という言葉を残して亡くなったんです。僕はこの言葉がすごく好きで、この言葉を文化的にわかってくれる世代という意味でも、りんたろうが一番。なんとかりんたろうのアニメを見たい。何を言えばわかってくれるだろう、“よし、山中貞雄だ”って」。

そして、「いま僕らが山中貞雄をやらないとずっとできないかもしれない。無理してでもやろうよと、これまででも一番大変な血の出るような思いで、無理難題の中で、やっとできあがった映画です。山中貞雄をいろいろな意味で日本文化の大事なものとして、僕らの心の中でちゃんと残していきたいという思いを、みなさんにわかっていただけるといいなと思います」と、その心中を語った。

1
2

SHARE

この記事をシェアする

Post
Share
Bookmark
LINE

連載

「新潟国際アニメーション映画祭」特集

アジア最大の長編アニメーション映画祭として開催される「第1回新潟国際アニメーション映画祭」。 2023年3月17日〜22日までの期間中、これまで多かったアート寄りの短編アニメを扱う映画祭とは異なり、長編商業アニメーション部門にフォーカス。 審査委員長を押井守監督がつとめ、世界15ヶ国から10本の作品がエントリーしたコンペティションのほか、大友克洋監督の作品を特集するレトロスペクティブ、りんたろう監督、永野護監督、片渕須直監督、磯光雄監督らが登壇するイベントを実施。 現地取材を交えながら、世界を見据えるアニメ映画祭の模様をレポート。

0件のコメント

※非ログインユーザーのコメントは編集部の承認を経て掲載されます。

※コメントの投稿前には利用規約の確認をお願いします。

コメントを削除します。
よろしいですか?

コメントを受け付けました

コメントは現在承認待ちです。

コメントは、編集部の承認を経て掲載されます。

※掲載可否の基準につきましては利用規約の確認をお願いします。

POP UP !

もっと見る

もっと見る

よく読まれている記事

KAI-YOU Premium

もっと見る

もっと見る

アニメ・漫画の週間ランキング

最新のPOPをお届け!

もっと見る

もっと見る

このページは、株式会社カイユウに所属するKAI-YOU編集部が、独自に定めたコンテンツポリシーに基づき制作・配信しています。 KAI-YOU.netでは、文芸、アニメや漫画、YouTuberやVTuber、音楽や映像、イラストやアート、ゲーム、ヒップホップ、テクノロジーなどに関する最新ニュースを毎日更新しています。様々なジャンルを横断するポップカルチャーに関するインタビューやコラム、レポートといったコンテンツをお届けします。

ページトップへ