2018年からブロックチェーン追求してきた現代美術家が語る「NFTの可能性」

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2018年からブロックチェーン追求してきた現代美術家が語る「NFTの可能性」
2018年からブロックチェーン追求してきた現代美術家が語る「NFTの可能性」

画像は、人気のNFTアート「CryptoPunks(クリプトパンク)」

POPなポイントを3行で

  • 現代美術家、スタートバーン代表の施井泰平インタビュー
  • ブロックチェーンおよびNFTは、何を可能にしたのか?
  • 「構築したかったのは"契約の継承"でした」
アート作品の所有者は一時的にそれを預かっているにすぎず、いつか未来の人類へと届ける義務がある。そのため、それを保管する意志と能力を持った人間から人間へ相続される必要がある

これは、今回のNFTを巡る取材中に現代美術家・施井泰平(しい・たいへい)氏が挙げた、美術をテーマにした漫画『ギャラリーフェイク』主人公の藤田玲司が、ある貴重な美術品を巡って話す一幕(『ギャラリーフェイク』30巻収録「シルクロードからの土産」)だ。

ここでは、アートとは所有者を変えながら、未来へと受け継がれていくものとして描かれている。

目次

現代美術家・泰平の構想が、ブロックチェーン技術によって花開いた

「僕が構築したかったのは"契約の継承"でした」

スタートバーン株式会社代表の施井泰平氏はこう話す。

「アート × ブロックチェーン」を掲げるスタートバーンは、取引記録を暗号技術によって集積するブロックチェーン技術を活用し、アートのためのインフラ『Startrail』の構築と、それを手軽に利用するためのウェブアプリケーションやAPIの提供を推進している。

集英社が展開するマンガアートの世界販売事業「SMAH」

『Startrail』は、集英社が展開するマンガアートの世界販売事業「SMAH」や日本最大のオークションハウス「SBIアートオークション」といったサービスで活用されている。

また、2021年にファッションブランドのANREALAGE(アンリアレイジ)は、『竜とそばかすの姫』とコラボレーションした際に、『Startrail』を用いてこのコラボしたデジタルルックをNFTコレクションとして販売するなどして、近年注目を集めている。 事例を見ればわかる通り、アート作品だけではなくて、漫画やアニメ、それにトレーディングカードゲームといったエンタメジャンルにもブロックチェーン技術を活用した環境を提供している。

泰平氏は、今のような成長著しい気鋭のサービスを提供するスタートアップ企業を経営する未来を「自分でも想像していなかった」と語る通り、もともとは現代アーティストとして知られる人物だった。

泰平氏はアーティストとして活動を続けながら、2006年に「テクノロジーを使ってアートのインフラを作る」というアートプロジェクトを開始。

泰平氏によれば、「二次流通の際にアーティストに還元金が送られるようにする」ことが重要だったという。そもそもそれまで、アーティストが作品を販売して本人の手を離れた後に高額になったとしても、その金銭的な利益をアーティストが受け取ることはできなかった。

この還元金の仕組みで特許を取得し、2015年に売買プラットフォーム「startbahn.org」を開発(作品を登録、販売、購入、二次販売、批評が出来るアートプラットフォーム、二次流通時にはアーティストに還元金が送られ批評家にも分配金が行く仕組み。2020年にサービス終了)。

ウェブアプリケーション化して世に出したものの、当時から出展アーティストより「ほかのサービスやオークションハウスで売られたら、還元金は支払われないのか?」といった質問も多く寄せられた。

その課題を解消するものこそが、プラットフォームに依存しないブロックチェーン技術だった。

「還元金というのはきっかけでしかなく、大事なのはサービスを横断した"契約の継承"を実現する仕組みです

これまでも不動産といった分野では不動産登記をして売買がなされるといった仕組みがありましたが、アートの世界ではしっかりとした登記システムは存在しませんでした。

そこで、アート作品の登記システムを脱中心的で改ざんリスクが極めて低いブロックチェーンによって構築することで、作品それぞれにブロックチェーン証明書を発行し、『この作品はどこのギャラリーで販売された』とか『どこでいつ二次販売・利用が行われ』といった情報を記録できるようにしました。その登記システムが『Startrail』です」(泰平氏)

このブロックチェーン技術を活用して近年話題になっているのが、デジタル作品にNFTを発行する「NFTアート」だ。

唯一無二性の担保と契約の継承を実現する、NFTアート

『Startrail』は、やがてNFTアートの隆盛と合流していく。

NFTもブロックチェーン証明書も、基本的な構造は同じです」。泰平氏はそう語る。

『Startrail』は、もともと絵画や彫刻などの物理的なアート作品に特化して、ブロックチェーン証明書と実物作品の紐付けの仕組みまでを提供してきた。

現在はそれと同様の構造で、デジタルアートとブロックチェーン証明書、すなわちNFTを紐付けているというわけだ。

「『Startrail』では、登記されたアート作品がその後どんなサービスで流通しても横断的に契約を実行・継承し続けられる環境をブロックチェーン技術によって構築しています。

例えば、これまではNFTマーケットプレイス『Rarible』で購入したアートを、別のNFTマーケットプレイスである『OpenSea』で二次流通させた場合、還元金をもらえないということがありました。近年では『Rarible』は『OpenSea』と提携したり、こうした状況も少しずつ改善し始めましたが、やはりマーケットを横断して契約を実行できる環境というのはまだ全然少ないです。

これは還元金だけでなく、著作権管理といった問題でもあります。アート作品などは販売されて人の手に渡っても、著作権自体はアーティストが保持しています。その上で例えば最近のNFT作品の中には『この作品はタトゥーにしていいですよ』といった形で著作権を一部開放することもあるし、アーティストによっては『この作品はオークションサイトに出品しないでほしい』といった意向があったりします。

そうしたアーティストの権利だったり、やってもOKな"ホワイトリスト"、やってはいけない"ブラックリスト"といった形で契約に盛り込んで、サービス横断的に継承していける。言い換えれば、二次流通・利用を管理できる世界を『Startrail』を目指しています」(泰平氏) ブロックチェーン技術によって、サービスを横断して"この作品は唯一無二のものである"という担保がなされ、その"流通経路"が明らかとなり、またアーティストの想定する"契約を継承"し続けることが可能となる未来が実現するかもしれない。

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