トー横界隈へ向けて──かつて新宿で客引きをしていたおれが思うこと

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トー横界隈へ向けて──かつて新宿で客引きをしていたおれが思うこと
トー横界隈へ向けて──かつて新宿で客引きをしていたおれが思うこと

POPなポイントを3行で

  • BBCディレクター・ILLNESSが執筆
  • 第3空間としてのトー横、新宿
  • 「行けば会える」という最高の場所
朝の7時に目が覚める。

2歳の三男と、4歳の次男はまだ寝息を立てている。

リビングに行くと30分前に起きた奥さんが朝ごはんを作っている。奥さんと一緒に起きた長男は毎朝リビングでダンスのステップの練習をしてる。おれが「おはよう」と言うと二人も「おはよう」と答える。

長男は週2回、楽しそうにダンスレッスンに通っている。合気道やサッカーの習い事も試してみたが、気が優しいから人と直接争わないダンスが一番気に入ってるようだ。 

おれは昔からクラブで踊ると言っても、酩酊して自分勝手に音楽に身を任せるだけのダンスしかしたことがなくて、人から正式なダンスレッスンなど受けたことがない。しかし奥さんは10数年前までレゲエを踊っていて、ダンスに関するある程度の知識もあるから長男にあれこれアドバイスすることができる。だから長男はキッチンで料理をつくる奥さんの前で、インストラクターから与えられた課題のステップの練習をする。

奥さんは料理を作りながら横目でそれを見て「いいじゃん上手になったね」と褒めたりする。 そうしているうちに次男と三男が起きてリビングにやってくる。7時過ぎだ。だいたいその頃に子どもたちの朝ごはんができあがる。

いただきますをして子どもたちが朝ごはんを食べ始める。小さなコップを3つ子どもたちの前に用意して飲み物を入れていく。長男はレモネード。次男と3男は牛乳。長男はおなかが痛くなるから牛乳を嫌がる。奥さんはまだ朝は食べない。おれはだいたい朝はプロテインだけ飲む。おれがプロテインを飲むのを見てたまに子どもたちが飲みたがるので、うちはプロテインの種類をオーガニックのものに変えた。だから飲みたいと言われたら少しだけ飲ませている。

長男はあっという間に朝ごはんを食べ終わり、着替え、歯を磨いて登校の準備をする。忘れ物はないかのいつものやり取りをおれとしてから「行ってきます!」と言い出ていく。ちょうど8時ころだ。最近忘れ物が減ってきた。やっぱ成長してるんだなと感じる。

そこから15分ほど遅れ次男と三男も朝食を食べ終える。次男はおれが、三男は奥さんが手伝い食べさせている。

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ごはんを食べたあとのわずかな時間に、次男はよく絵を描いている。紙に鉛筆で描いたり、段ボールにマジックで描いたり、画用紙に絵の具で描いたり。幼稚園児が描く可愛らしいものも描くし、不思議な雰囲気のものも描くが、グニャグニャとした不思議なものを描いてるときに「何を描いてるの?」と尋ねると彼は「サイケデリックアートだよ」と答える。  

おれの自宅の書斎には、昔から大好きだったサイケデリックアートがたくさん飾ってある。買った当時は酩酊しながら見ていたものもあるし、もちろんそうでないのもある。洋服のデザインの元ネタになるときもあったりするからけっこうたくさん集めていて、うちの子どもたちはそれを見てどういうものがサイケデリックアートなのかということを知っている。

長男と次男が特に好きなのがジム・ウードリングの『FRANK』というコミックで、それを読んでから子どもたちは自分たちでもサイケデリックアートを描くようになった。おれはそれを褒めるとき「サイケデリックでいいじゃん」と声をかけている。実際かなりサイケデリックで良いと思う。子どもの絵はすごい。

お絵描きを終えたら次は次男が登園の準備を始める。おれはシャツを着せ、靴下を履かせ、ズボンを履かせ、ジャケットを着せ、その上にコートを着せる。おれ自身も着替えると、おれは次男の登園バッグ、弁当箱、水筒を左手に持ち、右手は次男とつないで家を出る。

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9時に間に合うように次男を幼稚園まで連れて行ったら、帰る前に顔見知りの保護者たちに挨拶だけする。おれはよく幼稚園に来るパパとして認識されていて、けっこうみんな声をかけたり挨拶をしてくれる。

コロナ以前は、登園後に幼稚園の駐輪場で他のママやパパとおしゃべりして行事のことなど様々な情報交換などをしたが、コロナ以降の幼稚園は“登園後は駐輪場にたまらずできるだけ速やかにお帰りください”というスタンスで、それができなくなってしまった。だから今は挨拶だけして余計なことはせずサッと帰る。

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おれが自宅に戻るとだいたい三男は授乳中だ。2歳頃というとあたり前だがクソかわいいので、授乳が終わったらおれはなるべくたくさん触りたいし、そのかわいさにあやかりたいと思っている。三男はそれをわかっているので最初はあまりさわらせてくれないが、やがて楽しくなってきておれにベタベタ触られてしまう。

こんな感じでずっと赤ちゃんを育てていたいのに、子どもたちはみんなすぐ大きくなってしまう。子どもが大きくなっていくのは多くの親の場合は喜びらしいが、おれにとっては単なる悲しみだ。なるべく小さい状態のまま一緒にいたいし子どもの成長はふつうに寂しい。なるべく今のうちに触らなくてはと思ってるので、たくさん触る。

三男にベタベタさわりまくったそのあとは午前10時から正午くらいまで家事をやったり買い物に行ったりするが、そのへんは奥さんと一緒にやっている。特別な用事がない限りは大体いつも一緒にやっている。

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12時になって、奥さんがお昼ごはんを作ったら一緒に食べる。三男も一緒に食べる。    

ごはんを食べたら家を出る。ここから仕事だ。昼過ぎに家を出たら自分の事務所に行くときもあるし、そうじゃないこともある。アタマのおかしい部下や、アタマのおかしい取引先、アタマのおかしいデザイナー、アタマのおかしい会計士、アタマのおかしいグラフィックデザイナー、あたまのおかしいジャンキー、あたまのおかしくないジャンキー……あとはあすかくんなど、たくさんの人と会う。会った人と仕事の話をしたり、世間話をしたり、ドラッグの話をしたりする。ドラッグの話をするのもおれの仕事だ。まあ仕事じゃないドラッグの話もしているが。


そんな感じでおれは色んな人と仕事をする。でも仕事する時間自体はすごく短い。だいたい午後7時ぐらいまでには家に帰る。月に何回かは夜遅くまで仕事をすることもあるが、それ以外はほとんどそのくらいに帰る。子どもが家で待ってるのに長く働くやつはアホだ。 

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家に帰ったらだいたいごはんができていて、子どもたちと一緒に食べるけど、子どもたちだけが午後6時頃に先に食べ終えていることも多い。

ごはんを食べたら、おしゃべりをしたり、長男の宿題を見たりする。そのあと子どもたちをお風呂に入れるのはおれがやることが多く、その場合奥さんはタオルで子どもたちの身体を拭く役目。で奥さんはそれを終えてから一人でお風呂に入っている。おれは子どもと一緒にお風呂にはいるのは好きだし楽しい。おもちゃで遊んだり、バスボムで遊んだり、色々なことをする。

そのあとは歯を磨き、絵本などを読みながら子どもたちを寝かしつける。子どもが寝てから家事をやり、それが終わったら寝る。

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これが今のおれの生活。

最近の自分は、こんな感じの子ども中心で、極端に穏やかな生活を送っている。

以前の自分から考えるとウソのような生活だ。以前のおれの生活はと言えば、目覚めたときに口の中に溶けかけた睡眠薬のカプセルがまだ入っていて、鼻のまわりには白い粉がついてるような生活だった。毎日脳みその中で交感神経と副交感神経がケンカしているような日々だったが今はそれに比べるととても静かだ。

薬物で死ぬならまあいいかと思っていた人間が“子どもたちが大きくなるまで生きていたいな”なんて思うようになったんだから──つまり全て、決定的に変わっている

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だから、KAI-YOUのヨネくんがトー横界隈についてコラムを書いてくれと言ってきたときも、「え?トー横界隈?それって地雷系の女の子が集まってるやつ?」って感じであんまりよくわからなかった。子育てに忙しいおれは世間のことに疎いのだ。

でも調べたり、詳しく人に聞いたりしてるうちに、地雷系の女の子たちの格好や何がぴえんなのかも少しずつわかってきた──そして驚くような事件についても知った。

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2件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:5123)

冗長

匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:5048)

興味を惹く文章で最後まで読み進めましたがトー横界隈へ向けてというテーマにしては
あまりにもあっさりしているなという印象を受けました
そりゃ居場所がなかったりする人たちがここになら居られるかもっていう気持ちで集まっているのでしょうが
その部分にご自身の主観的な感想だけではなく
トー横に入り浸ってる様な世代の考えだったり言葉を織り交ぜてあったら更に興味深かったなと思います
冒頭で現在の暮らしぶりについて長文で語られていましたが今回の記事のテーマとそこまでリンクする要素でもなかったので
長すぎるな、、とも思いました。
過去にドラッグ等の使用経験を経て今の真逆の生活があるというお話のくだりがもっとシンプルに記述されていたら読み手側としてはありがたかったです。
あとトー横界隈の方々は非合法なドラッグ類は使用していないのでしたら
そこから脱線してドラッグについて語る必要性があったのでしょうか?
終始話の本質が見えづらい構成だったように感じました
テーマ自体は興味深かったので最後まで読みましたがリサーチが偏っているというか浅い、惜しい、といった感想を持ちました。
あと誤字が多いのでちゃんと添削するべきだと思います。せっかく興味を惹く文章なのにそこで気が散りました。

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