最後の「VIRTUAFREAK」──バーチャル×音楽の可能性、新木場ageHaのラストダンス

最後の「VIRTUAFREAK」──バーチャル×音楽の可能性、新木場ageHaのラストダンス
最後の「VIRTUAFREAK」──バーチャル×音楽の可能性、新木場ageHaのラストダンス

「VIRTUAFREAK」レポート

POPなポイントを3行で

  • VTuber音楽の祭典「VIRTUAFREAK」レポート
  • 新木場ageHaで開催されたラストダンス
  • TAKU INOUE、kzらが登場した最後の熱狂
2021年12月3日。最後の「VIRTUAFREAK(バーチャフリーク)」が新木場ageHaで開催された。

2018年、バーチャルYouTuber(VTuber)好きが集う音楽イベントとしてスタートした「VIRTUAFREAK」。当時、活動していたVTuberはおよそ5000人。

今となってはその数1万6000人以上ともいわれ、様々な場面で活躍しているが、「VIRTUAFREAK」はそんなVTuberの歴史とともに歩んできたリアルイベントだ。

『バーチャル』というカテゴライズする意味が薄れている」と公式サイトの告知で語られていたとおり、「VIRTUAFREAK」は今回で役割を終え、3年で計7回の歴史に幕を下ろす。会場である新木場のイベントホール・USEN STUDIO COASTも、定期借地契約満了により1月30日で閉館した。

「インターネットだけの繋がりではなく、オフラインでのコミュニティを確立させないとこのカルチャーは廃れてしまう」という使命感からスタートしたリアルイベント。

ラストダンスにも多くの関係者、参加者が集まり、会場は初冬の寒さにも負けない熱気に包まれた。

取材・文:Yugaming 編集:恩田雄多 撮影:Ayo Kajino / 103i / Mari Onouchi

【写真40枚】「VIRTUAFREAK」ラストダンスの熱狂

目次

かかるのはどれもが特別な思い入れのある「Vの曲」

新木場駅に降り立った22時半。改札からUSEN STUDIO COASTまで向かう人、ホールの前に並ぶ人もどこかしら浮足立った雰囲気で、互いにどの演者をどう見て回るのか計画を語り合っている。

この日、「VIRTUAFREAK」はARENA・BOX・WATER・ISLANDの計4フロアを跨いで展開。「VIRTUAFREAK」だけでなく、「VirtuaREAL」と「SUPERCHAT」の両イベントが参戦し、出演者も最大規模の布陣が敷かれていた。

23時。会場がオープンし観客がなだれ込むと、「ISLAND」フロアに待ち構えるのはオープニングDJ・BATSUさんの姿。2019年7月、同じく新木場ageHaで開催された「ASOBINITE!!!」の「VIRTUAFREAK -summer night-」ステージ以来の登場で、フロアを暖めていく。

BATSUさん

熱気の高まりつつあるフロアを少し離れて端から眺める。通路には開演が遅れているARENAへの入場を待機する人たちが、福男選びのように今か今かと待ち構えていた。ふと耳に聞き覚えのあるメロディが飛び込んでくる。EMMA HAZY MINAMIの「metro」。担当したライブレポートが懐かしい。

3年間続いてきた「VIRTUAFREAK」。そこで流れるのはいわゆる「Vの曲」ばかり。関係者やファンにとっては、そのどれもが特別な思い入れのあるものであり得るのだということに改めて気づかされる。

ARENAフロアの一番手はエハラミオリ

エハラミオリさん

開演したARENAフロアの一番手はエハラミオリさん。モネ「モネ活宣言」からスタートしたところに「これを観にきた」と言わんばかりの観客が集うと、TOKYO MACHINE「PARTY」(Hylen 170 Bootleg)を挟んで夜乃ネオン「しゅきしゅきぴっぴっぴ♡」へと繋ぐ。

フロアには光線が飛び交い、音に合わせて観客が手を挙げる。ステージの脇でPCに向かうVJやスタッフたちも体を揺らす。観客だけでなく、誰もが音を楽しみに来ている。

えのぐ×Marpril「ゼログラビティユニオン」を流すと「何がコロナだよなぁ! めちゃくちゃ生きづらいけど生きていこうなみんな!」と鬱憤を晴らすようにフロアに叫ぶ。続いてKMNZの2人が呼び込まれ、ライブパフォーマンス。他のWATER・BOXの2フロアでもyuzenさん、D.watt×The Herb Shopがオープニングを告げていた。

yuzenさん

D.watt×The Herb Shop

人気ナンバー「VR」で彼女たちのパフォーマンスが終わると次はワニとコウモリ。「しゃべりを聴きにきたんじゃなく楽しみにきたんだと思うので……」と話す彼らにフロアからは「両方!」「全部!」の声もチラホラ。「2時間しゃべるか!」との返答にフロアの雰囲気も和らぐ。

次々と曲を歌い上げたあと小休止。「良い曲は何回やっても良い」のお墨付きをもらったと言いながら、次に登場するsomuniaさんも歌う「twinkle night」をKMNZのLIZさんと共に披露。さらにエハラミオリさんも再び登場し「Jacked(Hacked)Fruity Luv」を熱唱。会場の熱気は早くも最高潮に達していた。

ワニとコウモリ

KMNZ

somuniaさん

どのフロアでも熱気は同じように高まっていた。ISLANDでは「Vtuber楽曲大賞」が開かれ、静かだが確かな議論にコアなファンたちが首を振る。

屋外のWATERでは初冬の寒さにも負けない喧騒が展開される。BOXでも知らぬ人同士が肩を並べ、同じ音楽に手を挙げる。

ケンモチヒデフミさん、kz(livetune)さん、tempura(TEMPLIME)さん、BOOGEY VOXXが、MaiRさんが。それぞれの出演者たちがそれぞれの音楽でフロアを沸かせていた。

ケンモチヒデフミさん

kzさん

様々なコミュニティが重なり合うオフラインの場

エリアとエリアの間を回遊する人の動きも盛んだ。そこかしこで人々が出会い、テキーラのショットが運ばれ、話に花を咲かせていた。

ネット上の名前だけしか知らなかった人同士の初顔合わせ、業界人が「また今度一緒に何かできれば……」と話すお決まりのトーク、KAI-YOU Premium編集長・新見氏が新卒社員相手に管を巻く──リアルイベントでは当たり前のこうした風景に、懐かしいほど久々で新鮮な印象を受ける。

tempuraさん

「VIRTUAFREAK」に初回から参加しているという観客の1人は、「ageHaでのバチャフリはBOXフロアを使った『VIRTUAFREAK -summer night-』以来」と笑みを浮かべる。

「その時はステージ前にしか人混みはなかったが、熱気は他のフロアにも負けていなかった。2年経って界隈が大きくなって、リリースされてる曲やそれを楽しむリスナーもたくさん増えた。それで今回ageHa全体を使うようになって、すごい感慨深いものがある。エハラさんやワニとコウモリもその頃をリスペクトした曲を全部やってくれたなって」

「地方から参戦している友人も多くいる。こういう機会がないとなかなか会えないからバチャフリは特別」と語って彼はもう一度フロアの人混みに消えていく。

BOOGEY VOXX feat. clocknote.

MaiRさん

一方、他の人に話を聞けば「VTuberには詳しくないけど、ageHaにはいつも来てるから名残惜しくて」「奥さんはクラブ遊び嫌いだから内緒の話ね」と楽しげに語ってくれた。

「オフラインでのコミュニティを確立させないとこのカルチャーは廃れてしまう」。そんな危機感からはじまったイベントは、確かに様々なコミュニティが重なり合う場所となっていた。

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