連載 | #5 コバヤシのアナログゲームで遊んでみようのコーナー

集英社やノーミーツも参戦 「ゲムマ2021秋」で感じたマーダーミステリーの勢い

集英社やノーミーツも参戦 「ゲムマ2021秋」で感じたマーダーミステリーの勢い
集英社やノーミーツも参戦 「ゲムマ2021秋」で感じたマーダーミステリーの勢い

「ゲームマーケット2021秋」/画像は全て編集部撮影

POPなポイントを3行で

  • 「ゲームマーケット2021秋」レポート
  • 会場で感じたマーダーミステリーの勢い
  • 集英社やノーミーツも参戦し裾野は拡大へ
11月20日・21日に東京ビッグサイトで開催され、1万8000人が来場した国内最大級のアナログゲーム即売会「ゲームマーケット2021秋」。

近年のボードゲームブームによって、年々その来場者数・出展社数を増やしているゲームマーケットに、KAI-YOU編集部も行ってきました。

様々なブースが出展する中で、特に目立っていたのがブームになりつつあるマーダーミステリーでした。

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そもそもマーダーミステリーって何?

マーダーミステリーとは、プレイヤーたちが殺人事件の登場人物となって真相を探っていくゲーム。

登場人物が演じる役の中には犯人も含まれていたり、殺人とは別にバレたらまずい秘密を持っていたりと、それぞれの思惑を隠しつつ、誰もが怪しく見える中で事件をたどっていきます。

そうした中で、自分にかけられた疑いをどう晴らすのか、事件の真相はなんなのか、そして自分のキャラクターに設定された目標を達成できるのかを目指していきます。

近年は中国でブームを巻き起こしており、日本でも数年前から、主にパッケージとして販売されるキットを使用する方式や、進行や演出のスタッフが付いて施設で行われる公演式が流行しつつありました。

しかし、これからという時に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行。オンラインで遊べるタイトルが登場するなど展開は続いていましたが、どうしても若干のブレーキがかかっていました。

そんな忍耐の期間を乗り越えた今回のゲームマーケットでは、企業・個人双方でマーダーミステリーのブースの出展が多く見られました。

国内のマダミス制作各社が集った「Studio OZON」ブース

各社が集結しているだけあって、来場者も多く集まっていました。

マーダーミステリーブースの中でも特に目を引いたのが、マーダーミステリーなどの制作を行うStudio OZONのブース。

Studio OZONの制作したタイトルはもちろん、cosaicDEAR SPIELEGroupSNERabbitholeなど、パッケージや公演形式のマーダーミステリーを作成する8社が共同で出展。

国内企業が制作するマーダーミステリーの見本市のようになっていました。

OZONの代表をつとめる久保さんによると、合同出展を行っているのは「2021春」からで、アナログゲーム全体の中ではまだまだ発展途上であるマーダーミステリーの盛り上がりをアピールするため、各社共同で出展しているそう。

これまでボードゲーム、リアル脱出ゲームなどの制作を行ってきた久保さんからしても、近年のマーダーミステリーの成長は目を見張るものがあるそうで、「中国でのブームや、コロナ禍において外より家で遊ぶ機会が増えていることも追い風となり、今後も市場の成長が期待できる」とのことでした。

様々なタイトルが出品されるブースの中で、個人的に目を引いたのがこちらの『PLRS-01: RED LINE』。

パッケージがオシャレ過ぎて、目に入るや否や思わず駆け寄りました。

聞けばこの作品は合同ブースの他に単体でもブース出展を行っているとのことで、そちらに向かってみることにしました。

マダミスが面白すぎて自分たちでもつくっちゃった「POLARIS」ブース

白を基調としたブースデザインもオシャレな「POLARIS」

向かった先はこちらのブース「POLARIS」。

「POLARIS」は、コロナ禍に立ち上げられ、人と人とが会えない時代にオンラインを通じてエンターテインメントを届けてきた「ノーミーツ」が新たに立ち上げたストーリーレーベル。
ダルい上司の打ち合わせ回避する方法考えた。【劇団ノーミーツ】
これから徐々に制限が緩和され、誰かと会うことが今まで以上に特別な時間になっていくことを見越して、ゲームを通して人と人が仲良くなるきっかけをつくるべくレーベルが作成されました。

『RED LINE』が発表された際のプレスリリースでは、メンバー間でマーダーミステリーを遊んだ際に、キャラクターになりきる没入感や会話によって参加者が仲良くなったことに感銘を受け、自分たちでも制作を開始したことが語られています(外部リンク)。

箱の中から台紙を取り出していくと、都度必要なアイテムが登場し、ゲーム・物語が進行していく仕掛けになっています。

みんなが仲良くなれるゲーム」を目指し、パッケージなどのデザインはもちろんUI・UXとしても初めて遊ぶ人たちが楽しみやすいようにこだわられています。

その最たる例が、物語の進行役となるゲームマスターがいなくても遊べるということ。マーダーミステリーはその性質上、話の真相を知っているとプレイヤーとして参加することができません。そのため、友達と遊びたくて買った人が一緒に推理に参加できない(通常はゲームマスターをする必要があるため)というジレンマが存在していました。

そういったハードルをクリアした『RED LINE』は一ユーザーとしては非常にありがたい仕様となっていると思います。

売れ行きも好調だったようで、2日間で400個を完売したようです。

ゲームマーケット初出展となった集英社ブース

今回のゲームマーケットにおけるマーダーミステリーでもうひとつ気になったのが、集英社の出展です。

集英社からは、集英社が新人ゲームクリエイターの才能を発掘・支援を行う「集英社ゲームクリエイターズCAMP」と、初心者も楽しめるマーダーミステリーレーベル「集英社マーダーミステリーエクスプレス」の2つのプロジェクトが出展。

出版社である集英社から、2つのプロジェクト参戦

「集英社ゲームクリエイターズCAMP」からはボードゲーム『モンスタートレーダーBG』が、ゲームマスター不要の「集英社マーダーミステリーエクスプレス」からはマーダーミステリー『ゲッコウ島サバイバル』『君のいないリライト』の2タイトルがそれぞれ出品されていました。

ブースでは、「集英社ゲームクリエイターズCAMP」がゲームクリエイターの企画持ち込みも開催。集英社の森通治さんは、「イベント前から持ち込みの応募は多く来ており、抽選によって泣く泣く断らざるを得なかった人もいた」」と話してくれました。

同人誌即売会の漫画持ち込みのように、ゲームの持ち込みコーナーを設けていた集英社ブース

一方「集英社マーダーミステリーエクスプレス」は、担当者の漆原さんによると、今回の2タイトルの制作にあたっては「改めてマーダーミステリーという遊びの裾野を広げることに注力した」とのこと。

現状のマーダーミステリーを初心者が遊ぶ際のハードルが「ゲームマスターがいないといけないこと」「キャラクターの設定を把握するために長文のテキストを読まないといけないこと」だと分析し、ゲームマスターが不要かつ導入に漫画を用いて没入しやすいようにデザインしていったそうです。

両プロジェクトともに売れ行きは好調で『モンスタートレーダーBG』は初日に完売。「集英社マーダーミステリーエクスプレス」は2日目用に急遽在庫を補充したほどでした。

領域外からもプロが参戦するマーダーミステリー、現場で感じたその勢い

今回のゲームマーケットでもっとも勢いを感じたマーダーミステリー。

あくまで体感ではありますが、会場を見回しても出展数がかなり増加していたことに加え、記事中で紹介してきたように、これまでアナログゲームを制作していなかったような領域の人々が参入してきていることが非常に大きいように感じます。

マーダーミステリーはデジタルゲームや他のアナログゲームと比べても物語性が強く、ノーミーツや集英社といった物語のプロが参入しやすい面がありますし、今後もそういった流れが続く可能性は大いにあり得るのではないでしょうか。

さらに、そうしてマーダーミステリーに価値を感じて参入してきた人たちが、カルチャーとしての裾野を広げることを意識し、そのために現状のマーダーミステリーのハードルを的確に分析。ハードルを下げた製品を出品し、それらが完売という形で受け入れられたことは、非常に喜ばしいことだと思います。

先日は、Studio OZONの協力のもとマーダーミステリーアプリ「ウズ」のチームが開発した、マーダーミステリーの公演参加を便利にするためのサービス「マダミス.jp」のβ版が公開されるなど、業界全体としてマーダーミステリーを盛り立てていこうという勢いが感じられます。 国内でのそういった流れや、Studio OZONの久保さんが言及していたような中国での大きな市場の形成といった後押しもあって、今後、より様々なクリエイターが参戦し市場を拡大していく可能性を感じることができました。

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