「メタバース構想」って結局なんなの? DJ RIOが語るクリエイター経済圏

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POPなポイントを3行で

  • REALITY代表・DJ RIOインタビュー
  • メタバースって結局なんなの?
  • メタバースは『竜とそばかすの姫』よりも自由
多くのIT企業が参入を宣言し、バズワードにもなりつつある「メタバース」。

仮想空間上で他のユーザーたちとアバターを介してコミュニケーションや経済活動をおこなえるサービスの総称として急激に熱を帯びつつある。

FacebookEpic Gamesなど海外の巨大企業により開拓の進む分野だが、そんな動きに呼応して参入を発表したのがREALITYだ。

急に目に触れる機会が増え、その語感には馴染みが出てきたものの、仮想空間サービスの実態までは一般に浸透しているとは言えない。

DJ RIOさん

今回、REALITY株式会社・DJ RIOさん(代表取締役社長 荒木英士さん)にインタビューを実施。バーチャルライブ配信アプリ「REALITY」として海外展開もしてきた同社が改めてメタバース事業への参入を発表した意味とは。

VTuberなどメタバースとも隣接する分野が活況する日本発のサービスとしての特色をうかがった。

取材・文:穂先 求 編集:ゆがみん

目次

「ようやくこの概念に名前がついた」メタバースの勃興にDJ RIOが思うこと

──REALITYは今年8月にメタバース事業への参入を発表しました。こちらの理由や経緯をお教えください。

DJ RIO ここ1〜2年で「ようやくこの概念に名前がついた」というのが正直な感想です。

REALITYを創業した2018年当時はまだ、「メタバース」という言葉は一般に使われていませんでした。しかし、当時はまだVTuberしか使っていないようなアバターを多くの人が持つようになり、その姿で人とコミュニケーション取ったり、創作活動や発表をする世界がいずれやって来ると考えていました。

そういった社会の実現を早めると共に、その時にみんなが使ってくれるようなプラットフォームをつくろうというコンセプトで、誰でもスマートフォン1台で始められるバーチャルライブ配信アプリ「REALITY」というサービスを立ち上げました。

「REALITY」は、スマートフォンさえあれば誰でもアバターをつくってフェイシャルキャプチャを使ったライブ配信やボイスチャットが出来るサービスです。今ではライブ配信だけでなく、アバターで参加するゲームや複数人のアバターが同じ空間内でおしゃべり出来る機能も実装しています。
REALITY Metaverse Trailer 2021
これまで「REALITY」を説明する際には、「アバターライブ配信サービス」や「アバターとゲームとSNSがくっついたもの」といった歯切れの悪い表現を使ってきました。ですが昨今メタバースという言葉が使われるようになり、それがREALITYが当初からコンセプトとして掲げている概念と一致していたことから、改めて自分たちのサービスの長期的な方向性を示す意味で「メタバース事業に参入」との発表を行いました。

──REALITYが考えるメタバースの定義とは、どういったものですか?

DJ RIO 現在、いろんな人が「メタバースとは何か」ということを言っていますが、僕たちとしては、次の3つをメタバースの構成要件として考えています。

1.アバターを通じたライブコミュニケーション

2.ユーザーが手を加えられてインタラクティブ性のある(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ/UGC的な)空間

3.メタバース内で実経済としてのお金を稼ぐことができるクリエイターエコノミー

これは評論家的な定義ではなく、今後は「REALITY」というサービスをこういうふうに発展させていくぞ、という宣言でもあります。

VRデバイスが普及してからが"メタバースの本番"

──メタバースへの参入企業が増える中で、REALITYの強みはどんなところですか?

DJ RIO 今まさにREALITYの全世界ユーザーを対象にヒアリングを行っているのですが、「日本のアニメスタイルのアバターが、とにかく可愛くて魅力的」という理由でサービスを使っているユーザーが多いです。

DJ RIOさんもいわゆるアニメスタイルのアバターだ

特に海外ですと、ジャパニーズポップカルチャー好きやVTuberファンの方も多いです。日本国内に比べて、国外における日本のアニメスタイルのバーチャルアバターはニッチなので、よりターゲットが絞り込まれたユーザの割合が高くなっているのでしょう。

アバターのスタイルが暗黙のうちに似通った傾向の人を集めるフィルターとして機能して、同質性の高いコミュニティがつくられるようになっている。「REALITY」では日本のポップカルチャーを共通の話題として、みんなが仲良くなりやすいという特色があります。

一方で、アニメスタイルのアバターを好まない人にとっては入りづらい面もあるので、そこにはメリットとデメリットの両方があると考えています。

──日本ではVTuber文化が隆盛を迎え、VRChatも独自の発展を遂げています。こうした状況は、REALITYでメタバース事業を展開する上でも追い風となっていますか?

DJ RIO アバターを使ってコミュニケーションをするお手本として、やはりVTuberの存在は大きいです。

一方で、VRChatは僕自身も利用して大きなインスピレーションを得ていますが、今あそこで行われていることは"未来の普通"なんですよね。

VRChatは多くの人にとってはまだすごくハードルが高い世界です。本気で楽しもうと思うと、ハイスペックなPC、VRヘッドセット、UnityやBlenderなどを使いこなすスキルなどが必要です。ハードルが高い分、VRChatの利用者はアバター自体にアイデンティティを感じて、あの世界の中で生きている感覚や自由に出来ることを開拓していっていますよね。

その感覚は"未来の普通"になってくるんでしょうけど、「REALITY」ではその高いハードルを下げて、もっとカジュアルにできれば、と考えながらつくっています。
REALITY 紹介動画
──「REALITY」はスマホアプリでのサービスですが、メタバースが進展する環境としてスマホよりもVRデバイスが優位になる状況は想定していますか?

DJ RIO 今、「REALITY」をスマートフォンで展開している理由は、単純に一番ユーザー数が多いからです。これからはPC版やVR版があっても良いし、出来るだけ普及しているデバイスのマルチプラットフォーム化を進めていくべきだと考えています。

ただ、マルチプラットフォーム化については、VRデバイスの普及率次第といった受け身な部分もあります。限られた開発陣をある程度集中していかないと、どうしても開発が分散してしまうからです。今後も、デバイスの普及率や市場動向に基づいて判断していくことになります。

とはいえ、先行者利益を取るためには他よりも半歩先にやってノウハウを溜めていく必要がある。このあたりは、かつてガラケーからスマートフォンへの開発リソースをシフトするタイミングの見極めとも似ています。

──メタバースの展開にとって、VRデバイスの普及は欠かせないものでしょうか? スマホだけでもメタバースは一般化していくとお考えですか?

DJ RIO スマートフォンだけでもメタバースは十分成り立つと思っています。

今、世界中で何億人も『フォートナイト』モバイル版や『荒野行動』で遊んでいて、特に若い世代はスマートフォンで遊ぶTPS・FPS的な体験に慣れていますよね。ですから、メタバースはスマートフォンだけでつくれますし、その世界の中でいろいろな活動をすることも可能です。
荒野行動×ケーニグセグコラボ襲来!
ただ、やはりVRデバイスが普及してからが本番とも思っています。

それこそ2006年に誕生したYouTubeが、ここまで巨大に成長し始めたのはモバイルでの視聴が普及し始めてからです。後から振り返ってみれば「スマートフォンからが本番だった」と見えるように、メタバースも後世から見ると「VRデバイスが普及するようになってからがメタバースの本番だった」と言われるようになると思います。

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