これまで表に現れなかったいろいろな問題が噴出するようになってくる。通常の生活でも感じていたことが抑圧された結果、表に出る……というのは誰しも経験したことがあるのではないだろうか。
そんなテーマを「漂流してしまった教室とその生徒」という題材で描くのが、夏目真悟監督が手がけるオリジナルアニメ『Sonny Boy(サニーボーイ)』だ。
本作が発表されるや否や、その一風変わったビジュアルと設定がアニメファンの目を惹いたが、蓋を開けてみるとそこで描かれていたのは「様々な想像の余地を視聴者に委ねる」SF学園ものだった。
ダイナミックな画こそないものの、淡泊に描かれる不穏な雰囲気。そして市川蒼、大西沙織、悠木碧らが演じる「何を考えているかわからない」キャラクターたち。それらの要素が合わさって、夏目監督が過去に携わった『四畳半神話体系』の湯浅政明監督作品を思わせるような、唯一無二の雰囲気を纏う作品が今生まれている。
文:羽海野渉=太田祥暉(TARKUS) 編集:恩田雄多
目次
『スペース☆ダンディ』夏目真悟の現代版“漂流教室”
夏目真悟監督といえばアニメーターとしてキャリアを出発させ、OVA『堀さんと宮村くん』で監督デビュー。渡辺信一郎総監督(本作には音楽アドバイザーとして参加)のオリジナルアニメ『スペース☆ダンディ』でテレビシリーズ初監督をつとめる。その後はマッドハウスを拠点として、『ワンパンマン』『ACCA13区監察課』『ブギーポップは笑わない』を監督してきた。本作はそんな夏目氏が監督・脚本をつとめるオリジナル作品だ。キャラクター原案には『老人Z』『PERFECT BLUE』の江口寿史、主題歌は銀杏BOYZという布陣でも話題を呼んでいる。
主人公は中学3年生の少年少女たち。夏休み半ばの登校日、謎の現象に巻き込まれて長良(ながら)や希たちは学校ごと異次元に転移してしまう。 それと同時に彼らは異能力を発現するが、それを使って暴れる者、リーダーとして統一しようとする者、元の世界へ戻ろうとする者にそれぞれ分かれていく。そして度重なる不可解な現象の中で彼らはサバイバル生活を余儀なくされる。
異次元へ転移した教室、という点で楳図かずおの『漂流教室』を連想させる本作だが、そのテーマはいたってシンプル。極限化に置かれた少年少女たちが、抑圧されていた思いを発露させながらサバイバルする。そして交流した果てに訪れるものは……? ということだ。
連載
毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。
0件のコメント