『るろ剣』緋村剣心と雪代縁の戦い、どちらが強い? 武術のプロに聞いてみた

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『るろ剣』緋村剣心と雪代縁の戦い、どちらが強い? 武術のプロに聞いてみた
『るろ剣』緋村剣心と雪代縁の戦い、どちらが強い? 武術のプロに聞いてみた

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』

POPなポイントを3行で

  • 映画『るろ剣』の剣心と縁、強いのはどっち?
  • 武術のプロが解説「武器の差が勝敗を分ける」
  • 牙突は「3回に1回は絶対に当たる」
映画『るろうに剣心 最終章 The Final』が上映中だ。大ヒットシリーズ「るろうに剣心」の完結編2部作の第1弾であり、第2弾『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は6月4日(金)より公開される。

迫力のあるアクションが大きな魅力となっている「るろ剣」だが、漫画に登場する技は我々にも再現できるのだろうか?

今回は昨日公開の前編に続き、日本の古武術に詳しい日本甲冑合戦之会およびガチ甲冑合戦の代表の横山雅始さんに「るろうに剣心のなかで特にできそうな技は?」「実際の技とどう違うのか?」など、より現実世界における再現性に関する話を聞いていく。

さらに、公開中の映画に登場する緋村剣心、雪代縁、斎藤一、相楽左之助、四乃森蒼紫の必殺技についても解説してもらった。 取材・文:まいしろ 編集:日野綾

緋村剣心の技で実際にできそうな技は?

──「るろうに剣心」の主人公・緋村剣心が使う飛天御剣流にはたくさんの技がありますが、そのなかでも特にできそうな技はありますか?

横山 「るろうに剣心」の技は飛び上がるものが多いんですよ。飛天御剣流も空を飛ぶものが多いんですけど、空を飛んでしまうともう実際にはできなくなるんですよね。

空飛んでたらできない

横山 できそうな技でいくと、「龍巣閃」(敵の急所に無数の攻撃を放つ高速乱れ技)はできると思います。
るろうに剣心・龍巣閃咬・ガチ甲冑合戦の似た技
横山 あとは「双龍閃」(抜刀した後そのまま刀の鞘で攻撃する技)。これは技としても実在していて、「鞘使い」と呼ばれる技術ですね。
るろうに剣心・双龍閃・ガチ甲冑合戦風に再現
横山 地面を叩いて相手に土をぶつける「土龍閃」という技もあります。

これは実際にやる流派があります。刀だと刃が傷んでしまうのであまりやらないのですが、棒などを使う場合は当たり前のようにやりますね。

──なるほど!

横山 ほかに納刀術の「龍鳴閃」という技もあります。技自体はかなりファンタジーですが、刀の納め方というのは皆がこだわるところですね。

刀を納めるときに「鍔(つば)鳴り」と呼ばれるチャリーンという音が出ることがあるのですが、ほぼすべての流派でこれを出してはいけないと言われています

あとは、剣を納めた後に襲われてもすぐ戦えるように納める、という技もあります。流派によって違いますが、納める瞬間というのは皆こだわっていますね。

納刀は皆こだわる

神谷活心流の奥義は誰でもやりやすい

──次に、神谷薫というキャラクターが使っている「神谷活心流」についてお聞きしたいです。殺人剣と言われる剣心の飛天御剣流に対して、薫の神谷活心流は「人を活かす剣」という思想を持っているのですが、これは実在する考えなのでしょうか?

横山 結論からいうと存在します。「柳生新陰流(やぎゅうしんかげりゅう)」の教えですね。

もとをたどると、禅宗の言葉で「殺人刀」「活人剣」という言葉があるんですね。そこから「人を活かし、教育するための剣術」という柳生新陰流の教えが生まれました。

柳生新陰流が出てきてからは、ほとんどの流派がこの活人剣という考えをもとにするようになって、刀を使うのに剣と称するようになります。幕末の頃には刀術と名乗る流派はほとんどないです。

──殺人「刀」ではなく活人「剣」が主流になっていったんですね。

横山 江戸時代は平和だったので「流派を残すために、殺人ではなく活人にしよう」というタテマエもあったんだと思います。

──神谷活心流には「刃止め・刃渡り」という、手を使って相手の刃を止める防御の技があるのですが、これは実際にできるのでしょうか?

横山 ありますね。腕に鉄が入った防具をつけて、その腕で相手の刀を止める、というのはよくやります。この防御がちゃんとできれば、敵は刀での攻撃はできなくなります。

──神谷活心流の「奥義」でもあるのですが、これは奥義にふさわしい技なのでしょうか?

横山 どちらかというと誰でもできる技なので、奥義ではないと思います。

どちらかというと誰でもできる

横山 ただ、度胸がいるのと、相手の切り込みを潰せるので、そういう意味ではいい技だと思います。

もうひとつ、神谷活心流には「膝ひしぎ」という折れた刀を使う技があります。刀が折れることを想定している流派は多いですね。鞘で防いだりすることもあります。

この膝ひしぎという技はかなり実践的なので、神谷活心流はこちらが奥義でもいいんじゃないかと思いました。

侍同士の一騎打ち、実はほとんど行われていない

──ほかのキャラクターの技についてもお聞きしていきたいのですが、まずは相楽左之助の「二重の極み」という二連撃の拳の技です。

横山 これは実際にありますね。軽いパンチを一発打って、気が緩んだ瞬間に重いパンチを打つという戦術です。実際によく使う技です。

──左之助は拳を痛めたりもしているのですが、ケガをしやすい技なのでしょうか?

横山 そうですね。100のエネルギーをぶつけると最低でも50は自分に返ってきます。身体や手を鍛えていないと、衝撃でケガをすることもあります。

──続いて、御庭番衆の四乃森蒼紫について。彼は小太刀を2本使った技が多いですね。

横山 小太刀は身体が小さくて力がない人に向いている武器です。相手の攻撃を避けて、懐に飛び込んでスキをつく、という戦い方です。

なので、体格がよくて背も高い四乃森蒼紫が、小太刀を使っているのは不思議です。初めてアニメを観たときは「なんで!?」と思いながら観ていました。

──武器の特性を知っているからこその視点ですね。

横山 ただ、小太刀を2本使うという技は実際あります。

四乃森蒼紫の「呉鉤十字」(小太刀を交差させて首を十字に斬りつける技)などは実際にもありますし、これは結構いい技ですよね。

──ありがとうございます。続いて「牙突」という突きで有名な元・新選組の斎藤一です。

横山 これも実際ありますね。牙突のように手を前に出す構えの流派も実際あります。

──そうなんですね!

横山 江戸時代の剣術は身体を正面に向けているので、突きに弱いんですね。牙突のような突きをされると、3回に1回は絶対に当たると思います

牙突は3回に1回あたる

──かなり強い技ですね。斎藤一は元・新選組の組長ですが、実際に突きの技は使っていたのでしょうか?

横山 使っています。新選組で突きを使っている人は多いですよ。斎藤一のほかに、沖田総司なども使っていました。

──ちゃんと史実に沿っているんですね。最後に、今回の実写版映画にも登場する雪代縁についてお聞きしたいです。

横山 縁の武器は「倭刀(わとう)」(大太刀)ですね。室町時代に使われていたもので、重くて長い刀をブンブン振り回すというものでした。剣術のようなテクニックはないですが、振り回されると近寄りにくいです。

──この雪代縁と緋村剣心の戦いが「るろうに剣心」という作品のクライマックスにもなるのですが、実際に戦った場合はどちらが強いのでしょうか?

横山 いやー、雪代縁かなぁ(笑)。

──その理由は?

横山 倭刀(大太刀)と打ち合ったら、剣心の刀はカーンと折れると思います。技術というより武器としての差が出ますね。

──最後にお聞きしたいのですが、「るろうに剣心」に出てくるような「一騎打ち」というのは実際に行われていたのでしょうか?

横山 良い質問ですね。実は、一騎打ちというのは戦国時代でもほとんどされていませんでした

一騎打ちは実はされていない

──そうなんですか!?

横山 明治よりも前であれば、合戦でたまたま大将がはち合わせて、そのまま一騎打ちになるということはありました。ただ、その場合もすぐに決着がつかなさそうなら、どうにかしてお互い逃げていたと思われます。

武術をやっている人同士の場合、よっぽど力に差がない限りは、自分が死ぬかもしれないんですね。無理に戦うよりも、勝負を決めずにお互いじりじり遠ざかって、引き分けということにしていました。

実際の一騎打ちの図

──つまり、実際の一騎打ちはお互い逃げることがかなり多かったということでしょうか?

横山 武術をやっている人なら、向き合ったときにある程度相手の実力がわかるんです。勝てそうならそのままやってもいいんですけど、しぶとそうなら自分も確実にケガをするので、わざわざ一騎打ちはやらないですね。

──侍にも侍の事情があったんですね。大変興味深いお話をありがとうございました!

©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会
※記事初出時、神谷活心流の技名に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。

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横山雅始

日本甲冑合戦之会/ガチ甲冑合戦 代表

日本甲冑合戦之会/ガチ甲冑合戦
総合実戦護身術功朗法
Essence of Samurai battle, 戦国の武術の技を解説・ガチ甲冑合戦

まいしろ

エンタメ分析家

社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。

Twitter:https://twitter.com/_maishilo_
note:https://note.mu/maishilo

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