Interview

  • 2021.10.15

「魔法を信じた自分を認めてあげてほしい」 どれみの物語じゃない『魔女見習いをさがして』インタビュー

子どもの頃にあると信じていた“魔法”。なぜ信じることができたのか。それは、物語の中で当たり前のように「魔法はあるもの」と描かれていたからかもしれない。

※本稿は、2020年11月に「KAI-YOU.net」で配信された記事を再構成したもの

「魔法を信じた自分を認めてあげてほしい」 どれみの物語じゃない『魔女見習いをさがして』インタビュー

アニメ「おジャ魔女どれみ」は、多くの子どもたちが「魔法はあるもの」と信じさせてくれた物語だろう。魔女見習いのどれみたちが魔法を使う姿に憧れたと同時に、魔法ではなく努力で問題を解決する姿に勇気をもらった。

そんな「おジャ魔女どれみ」は2019年に20周年を迎え、2020年11月に完全新作映画『魔女見習いをさがして』となって私たちのもとに帰ってきたのだ。しかし、どうやらどれみたちが主人公ではない様子。

『魔女見習いをさがして』Final予告

映画は「おジャ魔女どれみ」を子どもの頃に見ていた20代の女性たちが、作品の軌跡を辿りながら友情を深めていく物語。そして「魔法はあるもの」とかつては信じていた大人が現実的な悩みを抱え、もがく様子が描かれていた。

どれみたちの物語ではなく、どれみたちを“見ていた人”の物語を描いた意図とは。

「おジャ魔女どれみ」オリジナルスタッフの1人であり『魔女見習いをさがして』でも監督をつとめる佐藤順一さんと、本作で初監督をつとめる鎌谷悠さん、2人の監督へインタビューを実施。

『魔女見習いをさがして』の制作経緯や制作過程を中心に、本作における“魔法の立ち位置”、大人になった我々にとっての“魔法の在り方”を深く掘り下げた。

※この記事には映画『魔女見習いをさがして』本編の内容に関する記述があります。

目次

  1. 「おジャ魔女どれみ」を見ていないことが、作品づくりに活かされた
  2. どれみたちが“出ない”物語の理由
  3. リアリティを追求した登場人物の“悩み”
  4. 「魔法がある」と思えば、少しだけ幸せな気持ちになれる
  5. 「魔法を信じていた自分を認めてほしい」

「おジャ魔女どれみ」を見ていないことが、作品づくりに活かされた

映画『魔女見習いをさがして』

映画『魔女見習いをさがして』

──映画『魔女見習いをさがして』は佐藤監督をはじめ、TVアニメ「おジャ魔女どれみ」のオリジナル制作スタッフが揃っています。その中にシリーズ初参加にして初監督である鎌谷監督を抜擢した理由について教えてください。

佐藤順一(以下、佐藤) 当初は、TVアニメシリーズをつくっていたメンバーである脚本の山田(隆司 ※栗山緑)さんとプロデューサーの関(弘美)さんと僕の3人で『魔女見習いをさがして』の企画を進めていました。みんな還暦を迎えたアラ還です(笑)。

でも、本作の視聴者として考えていたのは、当時「おジャ魔女どれみ」のTVアニメシリーズを見ていた20~30代の女性。にもかかわらず、スタッフの中にその年代の人がいない。

さらに、現場をしっかり仕切れるような監督が必要でした。そこで、関さんがずっと注目していた鎌谷さんに参加してもらうことになりました。鎌谷さんがアニメ『タイガーマスクW』(2016年放送)の演出をされていたときから、関さんは「目をつけている」と言っていたんですよ。

映画『魔女見習いをさがして』佐藤順一監督

佐藤順一監督

鎌谷悠(以下、鎌谷) あははは(笑)。

──鎌谷監督は「おジャ魔女どれみ」世代かと思いますが、当時シリーズをご覧になられていました?

鎌谷 見ていなかったんですよ。関さんは「見ていたらいいな」と思っていたはず(笑)。

佐藤 でも、結果的に見ていないことが助かったんです。当時「おジャ魔女どれみ」を制作していたスタッフ陣は愛情が無駄に多いものですから、事あるごとに昔のネタを入れようとするんですけど(笑)。

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なぜ、どれみたちが“出ない”物語にしたのか?