連載 | #3 「バーチャルマーケット4」特集

バーチャルマーケット「とらのあなVR店」レポ 仮想空間で「同人誌に触れる楽しさ」

バーチャルマーケット「とらのあなVR店」レポ 仮想空間で「同人誌に触れる楽しさ」
バーチャルマーケット「とらのあなVR店」レポ 仮想空間で「同人誌に触れる楽しさ」

「とらのあなVR店」外観

POPなポイントを3行で

  • バーチャルマーケット「とらのあなVR店」レポート
  • 店舗を再現しただけではない「とらのあなVR店」
  • 「とらのあな」から見た仮想空間の意義
現在、4月29日から5月10日(日)まで開催中のバーチャルリアリティ(VR)空間上で行われてる世界最大級のイベント「バーチャルマーケット4」。

非常事態宣言下のゴールデンウィーク。自室から「VRChat」上の会場にアクセスできる注目のイベントです。VR機器がなくてもPCだけで参加できる気軽さもポイント。 来場者は延べ100万人を見込み、仮想空間上には企業40社、一般クリエイター1400サークルのブースが出展するという大規模なもの。12日間開催というスケジュールでもじっくり回る余裕はなさそうです。

そこでKAI-YOUでは仮想空間から「これは!」と感じたブースの模様をお届け。今回は企業出展会場に実際の店舗を再現した「とらのあな」ブースの様子をレポートします。

店舗を再現しただけではない「とらのあなVR店」

「とらのあな」ブースがあるのは、東京タワーや東京スカイツリー、東京駅舎など、東京のランドマークを模した建造物が多数並ぶ企業出展会場「パラリアルトーキョー」。

歩くだけでもワクワクする、かなり広大な会場を奥へ奥へと進むと見慣れた「とらのあな」の店舗が目に入ります。

「とらのあなVR店」と題されたこのブースは実店舗の外観・内装を再現。ブースの外ではオリジナル3Dモデル、中には同人誌が展示されていました。 ブースの外に展示されているオリジナル3Dモデルは人気イラストレーター・LAMさんデザインの「if the ♭」(イフ・ザ・フラット)。

展示されているモデルを眺めるだけでなく、モデルの横に設置されている「BUY」と表示されたオブジェクトを触ると販売ページが起動。バーチャルマーケットを堪能した後に、購入することもできます。 その場で試着も可能なのが嬉しいですね。

今回は単身で取材しましたが、誰かと出かけてお互いにポーズを決めて記念撮影するのも楽しそうに感じました。 また、ブースの2階ではLAMさんのイラスト展も開催。九条林檎さんといったLAMさんデザインのバーチャルYouTuber(VTuber)や、VRアドベンチャーゲーム『東京クロノス』といったイラストを鑑賞することができました。

電子同人誌という試み

1階は階段のプリントなど、「とらのあな」の店舗をかなり忠実に再現。

実店舗にも並んでいる同人誌の棚やキャッシュコーナーがあり、ここでも訪れたお客と店員になりきって遊ぶことができそうです。 同人誌は手に取ることが可能で、通販で買う時のように見本となる数ページをめくって確認することができます。

見本誌をめくる機能は、先日開催されていた仮想空間上での同人誌即売会「ComicVket」でも実装されていました。 仮想空間上にはデータ容量などの仮想空間ならではの制約もあり、見本誌をめくるシステムを用意するのはそれなりの困難がありそうです。 それでも「ComicVket」と「とらのあなVR店」のどちらも、同人誌が並び、それを手に取りページをめくる営みに重要な意義を持たせているように感じました。

なぜそのようなシステムを実装しているのか。そもそも仮想空間へブースを出すことに「とらのあな」はどのような意義を感じているのか。「とらのあなVR店」担当の方にお話をうかがいました。

「とらのあな」から見た仮想空間の意義

──『バーチャルマーケット4』に初出展された経緯は?

「とらのあな」担当さん そもそもの発端は、虎の穴のグループ企業のツクルノモリ株式会社にて「VRChat用3Dモデル『イフ・ザ・フラット』」を制作しようというところから始まりました。

個人クリエイターによるアバター(VRChat用3Dモデル)の販売市場はすでにあったのですが、データ改変や改造が当たり前の市場でした。

企業が参入するには版権管理の問題など課題が多々あり難しいところがありましたが、キャラクターデザインをされたLAM先生や3Dモデラーのmuta先生のご理解とご協力を得て、昨年末に無事発売することができました。

無事に発売することはできたのですが、次に問題になったのはどのように認知度をあげていけば良いのかという問題でした。

VRChatの存在は知られているとはいえ、ユーザーはまだごく一部です。そのごく一部のユーザーに効率良く知ってもらうためには?と考えた時に出てきた案が、バーチャルマーケットへの出展でした。

──仮想空間上での企業出展において、実現のために工夫された点はどのようなものでしょうか?

「とらのあな」担当さん 出展のきっかけは「イフ・ザ・フラット」認知獲得でしたが、ただ「イフ・ザ・フラット」を飾っただけではわざわざ見に来て頂いたお客様に申し訳がないと思いました。

そこで、とらのあなの店舗をVR空間につくり、「同人誌に触れる楽しさ」を味わっていただくことはできないか?と考えたのです。

最初は同人誌に触れると空中にビジョンが現れ、読むことができる形式を考えたのですが、それだと映像を見ているという感覚になり、同人誌をめくるワクワク感のようなものが再現できません。

そこで、3Dモデラーのいもたる先生にご協力をいただき、本をめくるように読める同人誌をご制作いただきました。

他にも、とらのあなVR店では同人誌の表紙に自分のアバターを描画できるコーナーもあり、同人誌をつくる楽しみも体験できます ──同人誌をVR上に展示する意図や意義はどのようにお考えでしょうか?

「とらのあな」担当さん 今まで、リアルなお店に来なければ体感することのできなかった、たくさんの同人誌に囲まれる楽しさや宝探しのようなわくわく感は、同じWeb上でも通信販売ではなかなか味わうことができません。

そういった店舗でしか味わえない楽しさを、Webを通じて伝えることがVRにはできると考えております。 ──そもそも、LAMさんデザインのモデル販売やイラスト展を開催されたきっかけや経緯は?

「とらのあな」担当さん LAM先生にお願いした理由は、多くのVTuberの3Dモデリングやキャラクターデザインを手掛けており、3Dモデル創作の造詣が深かった点が大きいです。また、先鋭的で未来的な絵にも惹かれました。

クリエイターのイラスト展については、弊社では現実世界で定期的に行っており、そういった活動を知っていただくために、VR空間でもイラスト展を開催させていただきました。 ──とらのあなは、『バーチャルマーケット4』および仮想空間での即売会という試みを、どのように捉えていますか?

「とらのあな」担当さん いずれはそういった市場も形成されていくのではないかと考えております。

ただ、まだまだ課題点も多く、ひとつひとつの課題をどのようにクリアしていくか、越えなければいけない壁というのもたくさんあると感じています。

もし、すべての壁を乗り越えることができれば、世界中の人が自宅に居ながら、世界中のクリエイターの様々な同人誌を楽しみ、手に入れることができる日がくるのだろうと思います。

──新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大をうけて、「コミックマーケット」はじめ様々な催事が中止・延期を余儀なくされています。そうした状況下で、今後こうしたバーチャル上の取り組みにこれまで以上に力を入れていくといった方針はありますか?

「とらのあな」担当さん 今年に入り非常事態宣言などを受け、弊社でも店舗は休業や営業時間を短縮するなど、対策を講じております。

この状況は長引くのではないかと危惧しており、バーチャルを含め、あらゆるWebを介した新たな取り組みに力を入れていく予定です。

「バーチャルマーケット4」へのアクセス方法

バーチャルマーケット盛り上がってます

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「バーチャルマーケット4」特集

2020年4月29日(水・祝)から5月10日(日)にかけて開催中の、バーチャルリアリティ(VR)空間上で行う世界最大級のイベント「バーチャルマーケット4」。 来場者は延べ100万人を見込み、仮想空間上には企業40社、一般クリエイター1400サークルのブースが出展するという大規模なイベントを特集。

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