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  • カート・ヴォネガットの小説『スローターハウス5』テレビシリーズ制作
  • アメリカのケーブルテレビ局・EPIXが手がける
  • ドレスデン空爆と時間旅行が交差するSF小説

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ヴォネガット『スローターハウス5』テレビシリーズ化 発禁にもなったSF小説

『スローターハウス5』(早川書房)表紙

アメリカのケーブルテレビ局・EPIXが、カート・ヴォネガットの小説『スローターハウス5』(原題は『Slaughterhouse-Five』)を元にしたテレビシリーズの制作を進めていることが明らかになった。

海外メディア「Variety」が報じている(外部リンク)。

ドレスデン空爆と時間旅行が交差するSFの傑作『スローターハウス5』

アメリカの小説家であるカート・ヴォネガット。たまに間違われるが、『タイタンの妖女』などで知られるカート・ヴォネガット・ジュニアとは、彼の息子ではなく、以前の彼自身の名義だ。

多作の作家として知られ、SF小説を中心にいくつもの優れた小説を世に送り出し、アメリカ文学の旗手として高く評価された。

彼の代表作の一つで、1969年に刊行された『スローターハウス5』(かつての邦題は『屠殺場5号』)は、ヴォネガット自身が第二次世界大戦にてドイツのドレスデンで捕虜になった経験をモチーフに書かれている。

1945年、第二次世界大戦の終盤、イギリスとアメリカによる大規模な空爆を受けて壊滅したドレスデンの爆撃は「ドレスデン虐殺」と呼称されることもあるほど徹底したものだった。

その強烈な体験をきっかけに執筆された『スローターハウス5』は、歴史上の出来事と、主人公の身に起こる時間旅行、そして宇宙人に連れ去られた先で彼らとの間で行われる対話といった不思議な体験を通した記述によって構成されている。

痛ましい人災をモチーフにしてはいるが教訓めいた内容ではない。何度も過去にタイムスリップし何度も宇宙人に誘拐され、そうした体験を通して主人公が培っていく哲学、そしてその全てがドレスデンに続いていくという静謐なSF作品として昇華されている。

アメリカの権威あるSF文学賞・ヒューゴー賞はじめ、数々の賞を受賞している。

一方で、ある地域では禁書に指定されたこともあるほど、発禁対象としてしばしば議論される作品でもある。

『スローターハウス5』は過去に一度、ジョージ・ロイ・ヒルの手によって映像化されたことがある。1972年に上映された映画版は「カンヌ国際映画祭」審査員賞はじめ、数々の賞に輝いた。

余談だが、その後ジョージ・ロイ・ヒルは、同じくアメリカの偉大な小説家の1人であるジョン・アーヴィングの傑作小説『ガープの世界』をも見事に映像化してみせ、優れた映画監督として知られている。

原作の刊行から実に50年もの歳月を経て、再び映像として蘇る『スローターハウス5』。EPIXは米Huluと配信契約を結んでいるため、いつの日か日本でも配信される時が来ると信じたい。

なお、2017年には、5作の未発表作品を含むカート・ヴォネガットの短編集『The Complete Novels』が刊行されている(日本訳は刊行されていない)。

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