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POPなポイントを3行で

  • ラッパー・Raq連載第2弾は新生cupcakKe
  • 下ネタラッパーがバズる歴史的な背景とは?
  • マイノリティを支援する彼女が求められる理由は?

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新世代の“ビッチ“ラッパー cupcakKe 下ネタキャラと引き換えに得るもの
どうも! ラッパーのRAqです。

前回のエミネムを取り上げたコラム記事は、多くの方に読んでいただけたようで大変嬉しく思っています。まだの方は、ぜひ読んでみてくださいね。 さて、連載2回目にあたる今回は、とてもユニークな立ち位置を築きつつある新世代の女性ラッパーのcupcakKe(カップケーキ)を紹介したいと思います。
CupcakKe - LGBT
さっそくcupcakKeとは……と話を進めたいところではありますが、どうして彼女がユニークなのかということを説明するにあたって、まずはヒップホップという文化の辿ってきた道のり。そして、その中で女性ラッパーたちがどのような立ち位置にあったかという点から振り返ってみたいと思います。

文:RAq 編集:ふじきりょうすけ

ヒップホップにおけるマッチョイズムと女性ラッパー

日本では、「フリースタイルダンジョン」や「高校生RAP選手権」などのMCバトルが注目を集めて久しいですが、ヒップホップは他のエンターテインメントのジャンルと比較すると、競技性が極めて高いジャンルであると言えます。

そもそもヒップホップの4大要素はMC(ラップ)・DJ・ブレイクダンス・グラフィティ。そのうちラップ・DJ・ブレイクダンスでは"バトル"が存在します。この背景には、ヒップホップの成り立ちが深く影響しています。
Afrika Bambaataa - Planet Rock
「ヒップホップ」の名付け親はアフリカ・バンバータだと言われています。彼はもともとブラック・スペード団というギャングの創始者であり、リーダーでした。

しかし、アフリカに旅をしたときに見た地域社会のあり方に感銘を受けたアフリカ・バンバータは、ニューヨークの暴力を止めることを決意。

彼は帰国後、自身の傘下にあるギャングのメンバーたちを「ズールー・ネイション」というヒップホップ・コミュニティへと変遷させていくことで暴力を止めていくのですが──この時に彼が活用したのが、地域で行われる「ブロックパーティー」でした。

彼は、そのパーティー周辺で誕生していたMC(ラップ)やDJ、グラフィティやブレイクダンスといった文化を「ヒップホップ」として統合・整理。パーティーの主催を通じて、平和や団結、愛、そして楽しむことを地域社会に広げていきました。

このときに従来のギャングの抗争を、もっと楽しくて平和な形で行うようになったものがヒップホップにおける様々なバトルであると言われています。

こうした背景があるため、今でもラッパーたちはヒップホップの音楽シーンを「ゲーム」と呼びますし、「ゲーム」のプレイヤーであるラッパーたちには、多くの場合、ある程度の競技性がついて回ります。

これがラッパーたちが、ときにディスりあいのビーフを展開する理由です。

このような男でも女でもスキルが物を言う世界にあって、初期に女性ラッパーとして活躍したラッパーたちは、男も顔負けのスキルを持つ"男勝りなMC"が多く、その一人であるロクサーヌ・シャンテについて、『ラップは何を映しているのか ――「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで』という書籍の中では、以下のように述べられています。

彼女が属したクイーンズをベースとするジュース・クルーにはビッグ・ダディ・ケインやクール・G・ラップという非常にスキルのあるラッパーたちが在籍していますが、彼女はスキルがあるので彼らとも互角にやり合う。当時の女性ラッパーは男性に負けない強い存在というイメージだった。 『ラップは何を映しているのか ――「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで』より

ギャングスタラップの隆盛

続いて、1990年代に入ると「ギャングスタ・ラップ」がブームを迎えます。これはギャングの世界観を歌詞の内容に落とし込んだラップスタイルで、カラー・ギャングが存在していたアメリカ西海岸から登場しました。

Showin' much flex when it's time to wreck a mic
Pimpin' hoes and clockin' a grip like my name was Dolomite

意訳:
マイクを握るときには、十分に放火する
売春婦を斡旋して、金を稼ぐ、まるで俺の名前がDolomiteかのように Dr.Dre feat. Snoop Dogg - “Nuthin’ But a G Thang”

こうした西海岸の動きに呼応して、東海岸では『スカーフェイス』などの映画に影響を受け、マフィアや麻薬カルテルの世界観を取り入れた「マフィオソ・ラップ」と呼ばれるスタイルが登場。

この背景には「クラック・コカイン」の流行があります。

1980年代後半には、ドラッグの密売業界において、従来の粉末コカインが供給過剰となって価格が下落。その中で、新たな商品として煙草で吸引できる状態に小わけした「クラック・コカイン」がニューヨークに浸透し始めました。

低価格かつ少量で販売できたことから、新たに多くの人間がコカインを使用するようになり、こうしたドラッグの流行や、麻薬を密売するギャングの抗争によって、アメリカのストリートは、アフリカ・バンバータの望みも虚しく荒れていきます。

そのような環境で、ドラッグの売人を経験したラッパーたちが、ドラッグディーラーや麻薬カルテルの世界観を表現するようになったのです。

Sipping Remy on the rocks, my crew something to watch
Nothing to stop, un-stoppable
Scheme on the ice, I got to hot your crew

意訳:
仕事で稼いだ基盤の上で、レミーマルタンを飲む
俺のクルーをよく見ておきな。俺たちを止めるものは何もない
アンストッパブルなのさ。俺のダイヤやコカインをパクってみろ
お前たちのクルーを皆殺しにするぜ JAY Z - "Can't Knock the Hustle"

力こそが物を言うギャング。麻薬カルテルのカルチャー。それらが強く影響したことにより、ヒップホップは男性社会やマッチョイズム的な側面が増すようになります。

また、こうした世界観には売春婦を斡旋する「ピンプ」などが登場するため、ラップの歌詞にも女性を蔑んだ形で表現するものが頻繁に登場するようになりました。

And before me dig out a bitch I have to find a contraceptive
You never know, she could be earnin' her man
And learnin' her man, and at the same time burnin' her man
Now, you know I ain't with that shit, Lieutenant
Ain't no pussy good enough to get burnt while I'm up in it

意訳:
それから、ビッチに挿入する前には、避妊具を見つけないとな
分かりゃしねえからな、そいつは男のために稼いでいるかもしれない
男から学んで、それと同時に男に性病を移してるかもしれない
さて、俺はそんなのゴメンだぜ、中尉さんよ
どんなプッシーも、ヤッてるときに病気を移されるんじゃたまったもんじゃない Dr.Dre feat. Snoop Dogg - “Nuthin’ But a G Thang”

こうした状況を逆手に取ったのが、リル・キムという女性ラッパーです。

彼女はあえて「ビッチ」をキャラクターとして演じ、セクシーな内容をラップすることで賛否両論を浴びながらも、当時のギャングスタラップの世界観の中に女性として入り込むことに成功。

男性社会のヒップホップの中に女性ラッパーの立ち位置を見出したのでした。

I used to be scared of the dick
Now I throw lips to the shit
Handle it like a real bitch

意訳:
私は、昔はディックが怖かった
だけど、今では口に含んで、リアルなビッチのように扱うわ リル・キム - “Big Momma Thang”

ここまで見てきたように、競争的であり男性社会であるという特徴を持つがゆえに「自分のスキルや力を誇示して、尊敬(リスペクト)を得る」ことが良しとされてきた従来のマッチョイズムなヒップホップ業界。

そこでの女性ラッパーの主な立ち位置は、一部の例外は存在したものの「男勝りの女性として勝負する」あるいは「ギャング文化の中に登場する女を演じる」という2つしかありませんでした。
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