これまでKAI-YOUでは、2016年の5月より開始されたプロジェクトの発足期から、200件を越えた一般公募の様子、そして最終選考の結果までを追ってきました。
そして今回ついに、最終選考を通過してグランプリを勝ち取った4つのアイデアが実際にプロトタイプを開発。現在、六本木ヒルズ展望台・東京シティビューで開催中の展示会「MEDIA AMBITION TOKYO 2017」にて、プロトタイプが展示され、誰でも体験することができます。
「MEDIA AMBITION TOKYO」はメディアアートの企画展。果たして、「Android Experiments OBJECT」の作品はどのように展示されているのか…? 開発者の方々にお話をうかがうこともできました。
デバイスによって課題を解決するという意識
六本木ヒルズ展望台・東京シティビューは名前の通りに、六本木ヒルズ52階の高層から、東京の中心街を一望できるおしゃれスポット。「どのプロダクトにも共通するのは、社会の抱える課題をデバイスによって解決していこうとする意識」Googleの担当者である清水さんはそう語ります。
Android Experiments OBJECTのプロジェクトで募集したアイデアには、大きく2つに分けると「Google/Androidの技術を用いること」「デバイスとして触れるものであること」というお題目がありましたが、偶然か必然か、共通項が生まれたようでした。
早速、それぞれのデバイスがどのような形となったのか、開発者のみなさんにお話を聞きながら体験してみました。
《Chronoscape》 時間を越えて景色をのぞける未来へ
望遠鏡のような、万華鏡のようなデバイス「Chronoscape」は、使用する場所でのぞき込んでデバイスを回すと、その場所の過去の景色が遡ってみることができるというもの。 位置情報にもとづいた写真を用いることにより、その場所の四季の変化や過去の景色を楽しむことができます。特に観光地などはで多くの人が写真をアップロードしているので、行く先々で楽しみが増えそうです。「テクノロジーの世界でよく言われていますが、AIの発達によってレコメンドの情報で溢れかえっているけど、僕らはこのデバイスをつくっていく中で、偶然の体験というものの大切さに気がついた」
Chronoscape開発者の宮崎さんと加来さんといわく、AIがおすすめする情報だけでなく、今後本当に求められていくのは、今回「Chronoscape」で実現したいと思った「偶然性」ではないかといいます。 これは是非とも体験してもらいたいのですが、筒状の筐体を回すことによって、まさに万華鏡のような美しいモーションで、景色がタイムマシンに乗ってるかのように遡っていきます。最終的に六本木ヒルズ建設前の景色が写し出されていました。
《ELI(エリ)》 あらゆる人が自分らしい英語を学べる未来へ
博報堂のプロダクトチーム・monomとデジタルクリエイティブスタジオ・1-10のメンバーがつくりあげたのは英語学習デバイス「ELI」。 普段日常的に喋っている会話を読み込み、その人の生活に根付いた言葉を用いた英語学習を生成してくれるというデバイス/アプリです。今回の展示では、新聞や本を朗読することにより、その中で使われた言葉の英単語を学習することができました。人工知能サービス「Google アシスタント」のようなコンシェルジュが、流暢な英語で発声をうながしてくれます。
デモ用といいつつも、かなりの完成度を誇っており、これがGoogleの音声認識技術を用いることによって実現したといいます。Googleのデータベースから例文を参照するため、開発者すらも把握できない、膨大な単語の学習が可能となっています。 開発者の小野さんは「日本人が日本人の友だちをつくるように、日本人が自分らしく外国人の友だちもつくれるといい」という思いからこのデバイスを思いついたそうです。毎日使っている言葉の英語を勉強する、という発想も新しさを感じました。
《Magic Calendar》 紙が、インターネットへつながる未来へ
スマートフォンで観れるGoogleカレンダーを、あえて別のデバイスにつなぐことによって、新たな体験を可能にしたデバイス「Magic Calendar」。 電源を使わない紙とデジタル(ディスプレイ)の中間を目指したというそのデバイスは、インテリアとしても楽しめそうな美しい仕上がりとなっていました。基本的な機能としては、Googleカレンダーにスマートフォンで入力した情報が、そのままリアルタイムに反映されるというもの。アプリ自体も「Magic Calendar」アプリとして、Googleカレンダーの技術を用いながらも新たに開発したそうです。
また、卓上のカレンダーも開発されており、こちらは虚像を用いてディスプレイが浮いているかのようなつくりとなっています。こちらはもう商品化を見越して動いているそう。 課題としている紙の質感の再現についても課題はありつつも、2〜3年後には電子ペーパーの技術もかなり飛躍するとのこと。
もともとスマートフォンやPCというデバイスで慣れ親しんでいる人の多いGoogleカレンダーですが、デバイスを変えるだけでこんなにも体験が変わるというのは驚き。
《Smart Maternity Mark》 妊婦さんに、みんなのやさしさが伝わる未来へ
最後に紹介するのは、いまでもたまに見かける、妊婦さんが鞄などにつけるマタニティマークをデバイス化した「Smart Maternity Mark」。マタニティマークをみて、電車で席を譲ったりしたことのある人もいるかと思います。 「Smart Maternity Mark」は、あらかじめアプリをダウンロードしている人に、妊婦さんが近くにいることを通知してくれたり、アプリを通じてやりとりをすることも可能。実際にアンケートを1300人以上からとったり、鉄道博物館で実証実験を行うなど、ユーザーの声を多く取り入れたそうです。 デバイスはシリコン製で、持っているだけで安心できる手触り。こちらもマッチング時に点滅するほか、まだ実装されていませんでしたが、緊急連絡としてギュッとつかむと病院や家族に連絡がいく仕組みも考えているとのこと。実はこのデバイスは、マタニティーマークに関するネガティブなネット上の意見──「つけていると嫌がらせされる」といったことが開発の発端。実際に、つけない人も増えているそうです。
開発チームリーダーの瀧澤さんは、そういったネットで広がりやすいネガティブな意見を変えたいといいます。妊婦さんだけでなく、目が見えない人などにもアレンジしてサービスを展開できそうです。
AEOで開発されたデバイスが展示されている「MEDIA AMBITION TOKYO 2017」の会期は2月11日から3月12日(月)まで。
時代の先端、といった大げさなものでもなく、あくまで実生活に根付いた、身近な感覚でつくられたデバイスはどこか温かみを感じさせてくれる、未来へのヒントとなっています。
イベント情報
Media Ambition Tokyo 2017
- 会期
- 2017/2/11(土)~3/12(日)
- 会場
- 六本木ヒルズ 他都内各所で展開予定
- 主催
- MAT実行委員会(六本木ヒルズ / CG-ARTS / JTQ Inc. / Rhizomatiks)
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