下請法にアニメ制作に関する事例が追加 制作現場の環境改善なるか?

下請法にアニメ制作に関する事例が追加 制作現場の環境改善なるか?
下請法にアニメ制作に関する事例が追加 制作現場の環境改善なるか?
公正取引委員会が12月14日、「下請代金支払遅延等防止法(下請法)に関する運用基準」を改正。一般社団法人 日本アニメーター・演出協会は、12月19日にアニメーション制作に関する事例が新たに追加されたことを発表した。

下請法とは、下請取引を公正なものとし、下請事業者の利益を保護することを目的とした法律。具体的には、取引条件などに関する書面提供や対価の支払期日の明示などを義務づけ、不当な受領拒否や支払いの遅延、代金の減額や報復措置など、いわゆる「下請けいじめ」を禁じることが定められている。

違反した場合は調査を経て、公表をともなう勧告措置などの法的制裁が行われるという。

下請法は、これまでにもアニメーション制作に適用されていたが、対象となる事例や運用基準に関する記載はなかった。今回の事例追加により、過酷な環境が問題視されているアニメ制作現場、特に個人アニメーターにもより適正に適用されるようになる見込みだ。

放送延期も相次ぎ問題視されるアニメ制作現場の環境

過密な制作スケジュールやアニメーターなど制作に従事する人々に支払われる賃金が低いなど、かねてから問題視されていたアニメ制作現場の労働環境。

「TVアニメ「ろんぐらいだぁす!」放送・配信日変更のお知らせ」(同作の放送延期は第3話に続き、2度目となる)/画像は「-TVアニメ「ろんぐらいだぁす!」公式サイト-」のスクリーンショット

10月には『Occultic;Nine-オカルティック・ナイン-』『ろんぐらいだぁす!』『第502統合戦闘航空団ブレイブウィッチーズ』といったアニメ作品が「制作スケジュールの遅れ」などを理由に放送延期となるなど、異例の事態が続いていた。

また、アニメ制作会社・P.A.WORKSの動画担当のスタッフが支払明細を個人のTwitterで暴露し、その低すぎる賃金や悲惨な内情がネット上で広がり、ちょっとした騒動へと発展していた。

アニメ業界の労働環境改善となるか?

そのような過酷な状況下にありながら、これまで、下請法のガイドラインとしてアニメーション制作に関する記載はなかった。

一般社団法人 日本アニメーター・演出協会(JAniCA)は10月26日、下請法の運用基準改正案に関するパブリックコメント(公募意見)が開始されたことを受け、アニメーション制作を下請法の適用対象として明示。違反事例に追加するよう求める意見を提出。

そして、12月14日に公開された改正運用基準に、アニメーション制作に関する記述が追加される運びとなった。その内容は以下のとおりだ。

第2 法の対象となる取引
「アニメーション制作業者が,製作委員会から制作を請け負うアニメーションの原画の作成を個人のアニメーターに委託すること。」

第4 親事業者の禁止行為
(その他の受領拒否)
「親事業者は,継続的に放送されるアニメーションの原画の作成を下請事業者であるアニメーション制作業者に委託しているところ,視聴率の低下に伴い放送が打ち切られたことを理由に,下請事業者が作成した原画を受領しなかった。」
(その他の買いたたき(3))
「親事業者は,アニメーションの原画の作成を下請事業者である個人のアニメーターに委託しているところ,親事業者の要望を反映させることにより作成費用が当初の見積りよりも割高となることを理由に下請事業者から下請代金の引上げを求められたにもかかわらず,そのような費用増を考慮することなく,当初の見積価格により通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。」
(その他の発注内容の変更・やり直し(3))
「親事業者は,アニメーションの動画の作成を下請事業者であるアニメーション制作業者に委託しているところ,親事業者が内容確認の上,完成品を受領したにもかかわらず,プロデューサーの意向により動画の品質を引き上げるための作業を行わせ,それに伴い生じた追加の費用を負担しなかった。」 日本アニメーター・演出協会(JAniCA)Webサイトより引用

JAniCA理事会はこの運用基準改正を機に、製作委員会などの発注者と元請制作会社、制作会社と個人アニメーターなど、アニメ制作に関する一連の取引を適正化し、長年に渡って指摘され続けてきたアニメ制作現場の環境改善を進めていく意思を示している。

不公正な取引の多い現状の改善、労働環境改善の第一歩になりそうだが、「アニメの制作本数が減るかもしれない?」といった意見もインターネット上で散見される。

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