声優・沼倉愛美ソロデビュー記念インタビュー 「一途」と「素直」の交差点

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「なぜできないのだろう?」毎日がひとり反省会だった

──振り返ってみて、養成所ではどういう生徒だったと思いますか?

沼倉 全然優秀ではなかったです。養成所の25人クラスには、自分と違う世界で生きてきた年齢もまちまちな人が集まっていたのもあり、私はいつからか人見知りになってしまって。人の視線を気にするタイプで、当時は自分の演技もつかめないままだったと思います。

──ふっきれた瞬間があったのですか?

沼倉 オーディションに合格できて、高校卒業と同時に声優事務所に「預かり」として入れることが決まった頃、講師の方が「だんだん恥をかくことを怖がらずにできるようになってきた。その調子で頑張りなさい」と言ってくださって。自覚はなかったけれど、多少の変化はしていたんでしょうね。

──若いうちなら変化もしやすいでしょうから、担任の先生が言った「早すぎることはない」が当たりましたね。

沼倉 そうかもしれないです。でも、預かりになっても基本的にはアルバイトをする生活で、週1回は養成所に通って、たまに事務所から連絡が来てオーディションを受けたりして。その年の冬まではお仕事はまったくなく、オーディションも受からずという感じで。

──当時に限らずですが、「できなくてツラい日々」を沼倉さんはどう乗り越えてきたんですか?

沼倉 最近はマシになってきましたけど、毎日がひとり反省会なんです。布団に入りながら「今日はこれができなかった、こっちはまだいけた」って考えながら寝るのが日課で。本当に眠れないこともあるのですが、精神衛生的に良くないと人から言われて、最近は昼間に反省するよう気をつけています(笑)。

悔しさよりも「できていない!」って気持ちのほうが大きくなって、開き直ることも知らなかった。「なぜできないのだろう?」って考えて、それこそずっと台本を見ていることもあります。ライブの練習もやっていないと落ち着かないから、事務所の地下にあるスタジオで1週間分の空き枠を全部借りて自主練したりとか。

養成所で講師として教えてくださった方が「できるかどうか心配じゃなくなるには練習するしかない。練習して練習して練習して、これだけ練習したからきっと大丈夫だって思えるところまで練習しないと、自分はだめなんだ」とおっしゃっていて、特に仕事を始めてからその気持ちがわかりましたね。

アイマスの現場で出会った、恩師の存在

──練習を重ねていたもののオーディションには受からない日々が冬まで続いて、転機が訪れたのはいつだったのですか?

沼倉 12月に受けた『THE IDOLM@STER(以下、アイマス)』のオーディションで、年明けに合格のお知らせをいただいてデビューが決まりました。本当にラッキーだったと思います。ただ、『アイマス』は当然ライブもあって、私は歌うといっても友達とカラオケをする程度でしたから、最初は苦労しましたね……。

沼倉愛美さんが演じた我那覇響/『THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 3 02我那覇響』ジャケット

「レコーディングってなに? このツマミがいっぱいある機材はなに?」という何もわからない状態から(笑)、「観客に見せられるもの」として完成させて、キャラクターの要素も入れないといけない。『アイマス』から教わったことは本当に多いです。

──印象的なことは数多くあると思いますが、『アイマス』を通じて得た大きな経験は?

沼倉 『アイマス』がアニメ化したときの音響監督が菊田浩巳さんでなければ、いまの私はこんなにたくさんの役をもらえる声優にはなれなかったと思います。

それまでアニメの仕事をほぼしていなかった私に、菊田さんは実践的な現場で、スタッフ側が考えている役者のあり方や、お芝居を構築するやり方を丁寧に教えてくださったんです。本来、現場はそんなことをするところじゃなく、持ち寄ったものをバランス良くまとめる場なのに……ある日アフレコ帰りに食事に連れて行ってくれて、いろんな話を聞きました。

そこから、菊田さんは「私の目が変わった」と言ってくださったんですね。それでたぶん、私の見る世界も変わった。教えられたことをひとつずつできるようにしようと思ったんです。『アイマス』は2クール続きましたけれど、その後も機会があるごとに現場で菊田さんに声をかけていただいて。そのあたりから、初めてメイン級の役が取れたり、『蒼き鋼のアルペジオ』が決まったりもしたのは、間違いなく菊田さんのおかげだと思います。

『蒼き鋼のアルペジオ』で沼倉愛美さんが演じたタカオ(左)/Trident『BLUE』ジャケット

──担任の先生、養成所の講師、菊田浩巳さんと、大人のアドバイスを素直な気持ちで受け止めて、実践し続けてきた経験を積み重ねている印象を受けます。

沼倉 後から気づくことって、たくさんあるんです。当時は聞き流していたこと……それこそ養成所での体験ひとつとっても、当時は実感として全然わからなかったけれど、仕事を始めてみたら「その通りだな」と思うこともある。実は、自分の中に残っているそういう言葉が生きていく財産になるんでしょうね

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