『僕だけがいない街』EDを歌う酸欠少女さユり インタビュー すべて間違いじゃなかったと信じて

「ミカヅキ」で歌った「それでも」に通じるメッセージ

TVアニメ『僕だけがいない街』/(C)2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会 (C)Kei SANBE 2015/KADOKAWA

──2月24日にリリースされる2ndシングルの表題曲「それは小さな光のような」は、アニメ『僕だけがいない街』のエンディングテーマとして、作詞作曲を梶浦由記さんが担当しています。作詞作曲を自身で行うさユりさんが、他の方が手がけた楽曲を歌うのは珍しいことだと思うのですが、初めて聴いたときの印象はいかがでしたか?

さユり 作品とのつながりがとても強いと思います。『僕だけがいない街』は、もともと原作の漫画が好きだったので、初めてメロディを聴いた瞬間から、作品の世界観を随所に感じました。雪が降るきれいな街の空気と、そこはかとなく漂う不穏な雰囲気が音になっているなって。

歌詞の中でも、過去を変えたり、自分を変えることで前に進もうとしていて、すごく作品の世界を描いているのですが、それだけじゃなく、自分自身と重なる部分もあったりして。私が「ミカヅキ」で歌った、未完成で不完全な存在が何かに抗い、もがきながら求める、「それでも」というフレーズに近いメッセージを感じて、私の歌でもあると思ってます。

アニメ「僕だけがいない街」第1弾PV

──『乱歩奇譚 Game of Laplace』に続くノイタミナ作品のタイアップですね。

さユり 自分が好きな作品に関われるというのがうれしかったです。一方で、チャンスをもらったからには、頑張らないといけないと。

『乱歩奇譚 Game of Laplace』の時は、エピソードによって曲の聞こえ方が違うという声を多くいただいて、それがおもしろかったんです。「それは小さな光のような」も、「主人公だけでなく、登場人物すべての思いを詰め込んだ曲」なので、エピソードによって、曲の届き方が変わるのかなと思っています。

──実際に歌ってみて、新たに感じたことはありますか?

さユり 自分にないものがあるというか、「ミカヅキ」の時よりも、少しだけ外の世界を向いている気がします。

たとえば、歌詞にある「君のこと 守りたいと思う」と言えるような、本当の強さや優しさをいまの私は持ってないけど、持ちたいと思っていて。

それを歌うことで、いまは自分になくても、その思いで前に進めるのかなと思っています。自分の言葉として歌うためにも、もっと頑張らないといけないし、そこは私としての戦いであり、挑んでいきたい

──歌う時にも、そういった強さや優しさを意識しているんですか?

さユり 考えながら歌うというよりは、自然に気持ちが込められる曲でした。感情移入しやすい人間なので、主人公の藤沼悟が誰かを守りたいという気持ちは、すぐに自分のものとして受け入れられたし、そういう意味でも、詩の世界にのめり込むように歌えたと思います。

(C)2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会 (C)Kei SANBE 2015/KADOKAWA

過去に戻ったら、いまのさユりが1つ消滅しちゃうかも

2ndシングル『それは小さな光のような』通常盤

──『僕だけがいない街』は原作からのファンということですが、いまの“藤沼悟の誰かを守りたいという気持ち”を含め、作品のどういった部分に惹かれたんでしょうか?

さユり 記憶やパラレルワールドを題材にした作品が好きなんです。その中でも『僕だけがいない街』は、主人公・藤沼悟が誰に知られることもなく、1人で頑張っている姿にグッときます

悟にとっては、プラマイゼロかマイナスになるだけなのに、それでも誰かを救おうとしていて。それに、彼が感じる過去への未練は、すごく自分に通じる部分がありますね。

──さユりさんにとっての「過去への未練」とはなんでしょうか?

さユり 酸欠少女さユりを構成する3人のキャラクターの中で、“14歳のさゆり”がまさにそういった後悔や未練を感じる私ですね。14歳の頃は周囲に馴染めず、学校にもあまり行けませんでした。

永遠の14歳 さゆり/さユりの後悔の念が生んだ/「ミカヅキ」(通常盤)より

悟の言葉に「『あの時こうしていれば』という言葉。後悔の言葉なんかじゃない。『こうしていれば出来たはず』という自分の心が真に折れるのを防ぐ言い訳だ」というセリフがあるんですけど、いま思い返してみると、当時、もっと自分に踏み込む方法があったんじゃないかなと思います。

──藤沼悟には、現在の記憶を維持したまま過去へタイムスリップする「リバイバル(再上映)」という能力がありますよね。

さユり 私も過去へ戻ってみたいですけど、仮に14歳の頃に戻ってうまくやり直したとしたら、いまのキャラクターが1つ消滅しちゃうかもって(笑)。そう考えると、戻らなくていいような気がします。

過去を変えることで、いまの自分はもちろん、自分がつくった「ミカヅキという曲も生まれないかもしれない。それに、いま生きている私の周囲の人が、死んでしまっているかもしれない……。それは嫌なので、1回それぞれのルートを経験したうえで、選択肢が欲しいですよね(笑)。

リバイバル(再上映)が、自分の死ぬ間際に発動するならともかく、現時点の私の状態で戻ったら、それはそれで後悔しそうです。アーティストとしての自分もまだ途中なので、そこで過去へ戻ってしまった自分を、後ろ向きに思ってしまうかもしれません。

(C)2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会 (C)Kei SANBE 2015/KADOKAWA

2ndシングル『それは小さな光のような』期間生産限定盤

次のページでは、まだどこにも公開されていない、さユりさん作詞作曲の「来世で会おう」について語ってもらった。

「来世で会おう」は、「それは小さな光のような」と対になる楽曲であり、さユりさんが「ミカヅキよりも奥にある葛藤を歌った」という渾身の1曲に仕上がっている。インタビュー中に登場する歌詞の一部やさユりさんが語る言葉から、楽曲を想像してみてほしい。

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