真逆だけど惹かれ合った2人
──出自やボカロへの関わり方も真逆だったとのことですが、お互いをどういう風にご覧になられていましたか?ササクレ ピノさんを知ったのは2010年くらいで、面白くて毒々しいんだけどポップな曲をつくっているイメージがありました。歌詞とか語感とかが面白くて、そこに僕も刺激を受けています。お会いするずっと前から聴いていたので、「あ、これピノさんに影響を受けているな」と感じる瞬間がありますね。
ピノキオ 本当ですか!? 嬉しいです。ササクレさんは、自分にとってはボカロをやる前から見ていた大先輩なので。
ササクレ ピノさんはいつからボカロを投稿されているんでしたっけ?
ピノキオ 2009年2月からですね。
ササクレ そんな最近だったんですね! ……って、もう5年も経っていますね(笑)。自分の中では最近でした。
ピノキオ ササクレさんはそれこそボカロ黎明期から活動されていますよね。
ササクレ そうですね。2007年の12月からずっと続けています。
ピノキオ ササクレさんに初めてお会いしたのは、ボカニコナイトでしたね。そのときに歌詞が毒々しいって言われたのを覚えていますよ(笑)。
ササクレ そのときから言ってました(笑)? でも、それって超絶ほめ言葉なんですよ。ピノさんの曲はかわいさとシュールさが同居していて、音の中にグロテスクなものが入っているんだけど、ハッとする言葉がいくつも散りばめられているんです。ポップさを用いることでギャップをつくり、説得力を持たせている。そのセンスとバランスがすばらしいと思います。
ピノキオ ありがとうございます! ササクレさんの音楽は寓話的ですよね。それを音で表現するのは僕にはできないことなんです。自分にできることは何だろう、と考えさせられる存在でした。
初めて「*ハロー、プラネット。」を聴いたときは衝撃でした。これ全部一人でやってるのか! と。こんなの聴いたら俺もうダメだって思う一方で、ボカロっておもしろいなーとも思いましたね。
【初音ミクオリジナル曲】*ハロー、プラネット。【ドットPV】
──ある意味、対極な2人が、最初の用途は違ったけれどボカロというツールによってつながって、惹かれ合ったということが、ボカロの持つ可能性でもあるのかもしれないと、聞いていて感じました。
音楽で世界を構築するために
──特にお二人は、作詞とメロディによる独特な世界観を感じますが、歌詞にはどれくらい時間をかけるのでしょうか?ピノキオ 一曲あたり、1日でできたら奇跡ですね。やはり2、3日は悩みます。
ササクレ それくらいかかりますよね。自分も2、3日でできたら奇跡中の奇跡です。歌詞を最後につくるんですが、なかなかハマる言葉がなかったりして苦労します。
ピノキオ 僕は歌詞を先につくっていたのですが、今は作曲と並行して作業しています。歌詞は、とにかくいっぱい文章を書いて、あてはまるものを曲に当てていく流れです。とりあえず量を書くのですが、ほぼボツになっちゃいます。歌詞って書いている途中でも方向性が変わることもありますからね。
ササクレさんは、寓話的な世界観をどうやってつくっているんですか?
ササクレ まず設定をつくって、キャラクターがどう動いて、その結果どうなったのかを思い描いておくと、ブレることのない一本線ができあがります。あとはそれに曲を入れ込んでいく感じですね。イメージイラストなども自分で描いていきます。曲が浮かばないときほど、たくさんの絵や文章を書きますね。
──世界観やストーリーがまずあって、そこにイメージに合わせた音楽が出来上がっていくという流れは、まるでゲームミュージックのようですね。
ササクレ あっ、たしかにそうかも! それはあると思いますね。たぶん、ゲームミュージックが体に刷り込まれているんだと思います。 ピノキオ 僕は絵よりも内面を考えますね。なぜかというと、曲をつくっているときには、まだ風景があまり浮かんでいないから。なので、曲ができてから後で絵を描いて補填する感じですね。
ササクレ 内面っていうのは?
ピノキオ 感情の動きですね。キャラクターがどう思っていて、それは違う視点からだとどんな思いになるのか。感情の動きと、自分の思いと、人の思い。それを曲に落としこんでいきます。ただ、人間の感情って限りがあるので、違う曲でも似てしまったりすることもあります。だからササクレさんのつくり方は参考になりました。
ササクレ 好きだからつい入れてしまうっていうものはありますよね。それをクセにするか、手法の一つにするかが大事。気付かずに使うんじゃなく、自分の持ち味にすれば作品の幅が広がりますから。その意味で今回のアルバムはどこまで変えていけるかというところに挑戦した作品なんです。
ピノキオ 僕は今回のアルバムは逆に自分の持ち味を突き詰めた感じですね。生死や時間の流れについての曲をつくることが多いので、それにフォーカスして一つにまとめてみたいなと。
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