「部屋の匂い」を感じる場にしたい Web音楽即売会「Apollo」座談会

創作意欲を引き出すためのイベント開催

 
──そうした、1人でも活動できる人たちが、今回Apolloに参加する意味っていうのはどのよういうところにあるんですか?

AnitaSun 即売会の会場だとジャケ買いすることが多いですけど、それで知らないアーティストも買われる訳です。そこにおいては、(即売会では後ろに並ぶ人の関係でやりにくい)試聴がたっぷりできる環境というのはより強力で、これをきっかけに新しい大手サークルに生まれてほしいんです。

M3など試聴環境が整えられた会場であっても、全作品に耳を通すことは物理的に難しい

のりお 15秒で切り替えながらどんどん垂れ流しで聞くことが出来て、1000作品まとめて聞けるっていう環境は今のところ他にないと思うんですよね。

きくお 場があるっていうのは素直に嬉しいですね。つくり手としては音楽で場を盛り上げたい気持ちがあるから、安心して参加できるところが良いです。パッと見た時に面白そうと感じたので、自分もこのお祭りに参加したいなという気持ち。

与作 Diverseは純粋に「Apollo」の告知ページを見て、キレイだったからこれやろう、って感じです。その辺のつくりとか見ればちゃんとやるなっていう判断が出来ますもん。

きくお 儲けのためだけじゃない、好きだからやってる感じが伝わりますよね。

AnitaSun この間、テナントショップ「ニコニコ本社」の移転に合わせて、ニコニコ×PARCOの広告が池袋に一杯出ていたんですよ。あれを見ていると広告をつくる側が楽しんでつくっているのが伝わってきますよね。金のことだけ考えていてもヘッドショット率は上げられませんもん。

のりお あと、祭りを設定することで、物をつくろうと思ってもらえるきっかけを提供したいなと思っています。さっきも締切に向かって創作活動をしているという話も聞きましたが、例えば普段生活していていきなり「あ、Tシャツつくろう」とか、なかなか思わないですよね。何か作品を出す場所やイベントがないとそういう考えにはならないんです。

僕らはpixivを運営していて、人々の創作意欲を日頃から浴びていたので、BOOTHをつくれば商品をつくって登録する人が増えるんだろう、と安易に思っていたけど、実際はなかなか難しい。やっぱり商品となると1枚イラストを描くだけよりコストもかかるし、売り場があるだけでは人はものをつくらない。目標となるイベントがあることでそういう意欲が湧いてくるのだと思うんです。

きくお サービスを知る機会としても、こういうイベントのようなきっかけがないと比較検討とかしないんですよね。今回のきっかけでBOOTHについても調べたんですが、これから同人ショップでまかないきれないグッズ販売などでも使っていこうと思っています。

AnitaSun ちゃんとお金で買ってもらえるっていうことは気持ちが良いことだし、下心でもあるんです。それがたとえ赤字でも、値段をつけたものを買ってくれるほうが、無料で聞かれることから比べて本当に満たされるんですよね。

与作 僕も企画をつくるときに、これは赤字でもそういう企画だし問題はないけど、赤字なら赤字なりにどうするか。これは企画としては恐らく黒字になるだろうから、じゃあどうやって人の手にとってもらえるようにやっていくか、とか考えます。

AnitaSun お金って、他の得点付けに比べて、かなり承認欲求を満たしますから。

きくお 払う側としてもこの作品を楽しみたいんだという確認になります。

与作 お金を払うのは価値を認めている証拠だからね。

Webだから実現できる販売方法、内容

──そういえばApolloにはデータ容量制限ってあります?

のりお 3GBの制限があります。

与作 あ、それじゃ「A.D.2011 COMPLETE」をApolloに出そうと思ったんだけど無理ですね。こいつ8GBあるんだもん。このあいだの夏コミで、USBに2011年につくった曲を全部入れるっていうことをやったんですよ。

AnitaSun これ、確か1枚あたりでも結構なお金かかってたはず。

与作 制作原価1000円/枚越えてます。

のりお このパッケージカッコイイ〜〜〜こりゃ、BOOTHの容量10GBに増やさなきゃ(笑)。(現在は10GBに増量済み)

データの話で言うと、Apolloに関しては出品者にWAVデータを上げていただき、こちらでMP3やAAC、FLACなどに変換するので、購入者がお好みのデータ形式を選んでダウンロードできるようになっています。

「A.D.2011 COMPLETE」。一年分の楽曲が1本のUSBメモリに収められている

──ダウンロード頒布だとCDのハードに縛られない分、いろんな冒険をしてくる人が出てくるのもちょっと楽しみにしているんですよね。

AnitaSun みなさんにも、アルバムジャケットのイラストデータをレイヤー分けされた状態でアタッチして頒布するとか、是非ぜひこの機能で遊んでみてください! 私は、楽曲の全制作データをzipでおまけに付けたいと思っています。

与作 今「works.」のDJミックス音源ってのが頭によぎったなぁ。作業中ずっと垂れ流しておけるやつ。

AnitaSun そういえばきくおさん、最近よくDJされてるじゃないですか。どういう曲かけてるんですか?

きくお DJと言ってもいいのかな?基本的に自分の曲しかかけないんですよね。他の人の曲をかけたくないというか。

与作 それライブに近い感じですね。

のりお でもそういうやり方のほうが好きなファンも居ますよ。昔はよくFatboy SlimのDJとか行っていたのですけど、DJ本人の曲はほとんどかけてくれない。本人的には盛り上がる曲を選んでいるんだろうけど、一方でその場のファンはやっぱり本人のオリジナル曲が聞きたいっていう事はありますよね。

与作 よくそういう話は聞くんですが、曲をかける側は良い曲があるからそれを紹介したくて、聞く側はそれよりも本人の曲が聞きたいっていうことだと思うんです。僕の中では「DJ」なのか「ライブ」なのかで分けて考えています。

AnitaSun 私は滅多にDJやライブをしないんですが、もし今度やるときはみんなライブ会場の床に座って聞いてもらいたいな(笑)

大切なのは「部屋の匂い」

 
──イベントとして、場をつくるにあたって、ただ用意するだけでは絶対に盛り上がらないと思うんです。活発な場をつくるためには、やはり哲学も必要だと考えるのですが、「Apollo」はいかがですか?

AnitaSun その通りです! 個人的にいろんな所で言っていることなんですが、哲学というのは、要はつくった人の部屋の匂いなんです。

昔の2ちゃんねるはひろゆきの部屋のにおいがした。出来たばかりのニコ動も、ひろゆきと戀塚さんの部屋の匂いがしましたよね。スルメ食いながらパンツ一丁でこれ見てるんだろうなって感じが凄く伝わってくるんです。そしてそれに賛同する人がやってくる。

これがもし、そういう雰囲気付けもなく、ただ単純に「自由に動画を投稿できる、宣伝にも利用できる場をつくりました」というだけのサービスだったら、企業広告だらけになったはずなんです。それが、あの独特の匂いのおかげで、サービス開始初期はあそこでCMを投稿しようっていう発想に至った企業はほとんどいなかったんですよ。雰囲気的にアングラすぎて、リスキーでしたからね。

与作 確かに最近そういう広告が実際に入るようになってからはニコ動見てない感じがするな。

AnitaSun 最近はちょっと部屋の匂いが薄れちゃった気がしますね…。

今回のApolloは、そういう我々の部屋の匂いを頑張って出すよう努力しています。片桐社長にはもっと間口を広げてもいいんじゃない? と言われたんだけど、そこは絞らなきゃダメなんです。それぞれ場ごとの匂いっていうものがあって、例えば弾き語り系のインディーズの人だらけの場所になっちゃったら、同人界隈の人は当然投稿しにくくなります。だから、目的に沿って絞らないといけない。

立ち上げ当初のmixiも「これはオシャレな人の部屋の匂いがする」って思ったもんね(笑)。すっごい、本当に自分だけの感覚だとは思うので恐縮ですが…FacebookもFacebookで、あれはキョロ充の匂いがします。

……ってこのくだり、流石にまずいので、記事からは削ってくれると信じてお話しているんですが……

──面白いんで載せましょう!リード文にしたいくらいです!

AnitaSun うわーーーっ、ちょっと待ってください、せめて、めちゃくちゃ申し訳なさそうな雰囲気で文字に起こしてください!!
【次ページ】これからの音楽活動
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